【HQ】会社の上司が黒尾鉄朗だった話 (ページ5)

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それから私は海外の高校で1年を過ごし、関西の大学で4年間、大学院で2年間を過ごすことになる。

1年の海外生活で英語が話せるようになった私は、大学の4年間
も大学院での2年間もひたすらに英語を磨いた。

長期休暇の度に海外旅行に行ったし、短期だけど留学もした。

大学院2年目、同級生よりも少し遅れて就活を始めた時、説明会の日程を確認していたらある求人が目に入った。

”日本バレーボール協会”

あ、そういえば…

自分のことで精一杯だった7年間、思い出すことも連絡を取ることもなかった2人のことを思い出す。

もしかしたらてつくんは選手になってるかもしれない。
研磨だって、まだバレーを続けてるかもしれない。

あとから知ったことだが、バレーボール協会が新入社員を募集するのは珍しいことだった。

1名、2名の枠をなんとか今までの経歴でもぎ取り、私は内定を貰った。

どの部署に配属されるかは4月まで分からないらしい。
内定が決まるのが早かったから、少しの間すっかり忘れていたバレーボールについて勉強した。

てつくんが言ってた”セッター”とか”1人時間差”とか、色んな言葉が思い出と一緒に蘇ってくる。

そうしているうちに4月、入社式。
10人ほどの新入社員とはすぐに打ち解けることができた。

みんなバレー経験があったり、色んな思いを持ってここに来ていることがわかった。

「欅 A 競技普及事業部」

そう書かれた紙を持ってオフィスへ向かう。今日は顔を見せるだけで大丈夫らしい。

カードでドキドキしながら鍵を開ける。

ﾋﾟｯ

『失礼します。今日からお世話になります欅です。』

そう声を張り、お辞儀をする。

「あれ？A、こんなところで何して…」

「お？黒尾、知り合いか？」

そんな会話が聞こえて顔を上げる。

そこには高校時代から何も変わってないてつくんの姿があった。

『てつくん！？どうして…』

「いや、それはこっちのセリフなんだけど」

そう言って首の後ろに手をやる。
癖から何まで変わりなくて、新しい職場への緊張がほぐれた。