【West黄】奥さん、僕が貴女を奪ってみせますよ

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「じゃあ行って来ます。」

「…いってらっしゃい。」

お決まりだったいってらっしゃいのキスも無い。

なんだかお互いとてつもなくよそよそしくなってしまったなぁ。

確かEDになったらあんまり気にしてないよって感じで振舞うのが良いって聞いたような。

だとしたらもう手遅れか。


ピンポーンとインターホンが鳴る。
｢…はい。｣

｢あのぉ〜、こちら濱ちゃんのお宅でしょうか？｣
ドアのスコープ越しに宅配便のお兄さんが箱を持って物凄い八の字に下げた眉毛で喋り掛けている。

「…そうですけど。」

「良かった〜あ、俺ね濱ちゃんのお友達ので照史っていいます。んで、これは濱ちゃん宛のお届け物ですう。ココ、ハンコお願いしま〜す。」

ドアを開けるや否や早口に小さなダンボールに入った荷物と伝票を手渡された。

「いやー、かわいい奥さんやって濱ちゃんから聞いとったけどほんまやったとは！」

「それが、」
その濱ちゃんと早くも上手くいってないんです…なんて初対面の人、しかも濱ちゃんの友達に言うべきでは無いのについ口にしてしまった。

「あ〜じゃあこれ開けない方がええやつかも知れへんな…」
箱に視線を向けると慌てて、男のカンですから気にせんといて下さいね、と慌てて付けたされ、色々と悪い方向に予想してしまう。

「んじゃ、濱ちゃんに宜しく言っといて下さい！あとこれ俺の友達がやってる料理教室のビラです！他の人と話すとストレス発散に良いっていいますからね！俺もこの近く来たらまた寄ります！」

主婦の愚痴一つにやたら心配してくれるんだな…さすが濱ちゃんのお友達。


─主婦の憩いの場！楽しくお喋りしながら食卓に手作りの１品を増やしませんか？講師 中間淳太


料理教室か…確かに結婚してから友達にも全然会ってないし話す相手が居ないからさっきみたいに宅配便のお兄さんに愚痴ってしまうのかも。

…綺麗にテープを貼り直せばバレないかな、なんて幼稚な悪知恵が頭をよぎる。

「いくらなんでも旦那の荷物勝手に開けちゃダメだよね…？」

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