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『…すごいな、ほんとにプラスチックが出来ちゃった』
型に流れていくフェノール樹脂をしゃがみこんで見ながら呟けば千空が笑う。
「ククク、信用してなかったのかよ」
『いや、そういう訳じゃないけど…いざ目にするとなんか感動して…。
ほんとに文明が戻りつつあるんだなぁって』
「"それ"をお前が一番信用してたんじゃなかったのか」
『してるよ、勿論。だからこそ感動してるの。
やっぱり、千空は凄い人だ』
赤い目を捉え、そう言えば楽しそうに笑った彼。
「なら、その"凄い人"の俺が認めるお前もすげえだろうが」
『ええ…?それは違うでしょ…』
「あ?また自己肯定感下げんのか」
『あー…いや、そうだな。あなたの隣に居るなら、私も同じようになんなきゃね』
ふふ、と私が笑えば、千空の大きくて温かな手が私の頭を撫でた。
顔を上げれば、目を細め優しく微笑む彼。
『…ねえ千空。私、あなたの目のこと、尖晶石って言ったの覚えてる?』
「あぁ」
『
だから、尖晶石なんて少し捻った言い方をしたけど、千空にはもっと似合うものあったね』
「ククク、おありがてえな。何の石だ」
『柘榴石――ガーネットだよ』
ハッキリとそう言えば、赤いガーネットの瞳が一瞬揺らぎ、そして輝いた。
『尖晶石の石言葉も似合うけど、ガーネットの方が千空らしいや。"実りの象徴"とか"信頼と愛の石"とか、色んな意味が込められてるし、何より1月の誕生石だし』
「…」
『それに、ガーネットは古い歴史があるんだよ。ノアの方舟の伝説じゃ、何日も続く洪水の暗闇を照らす灯の役割をしていたって云われてる。
…千空は、私にとっては"そんな存在"だから…やっぱりガーネットが似合うよ』
あの日――たくさんの星が降る夜、あなたが私の心を助けてくれた。
今思い返せば、昔からあなたは温もりも優しさもくれていた。きっと広義的な愛を込めて。
でも蔑ろにしていたのは私だ。
…だからこそ、私は彼に返していきたい。今まで与えられていた分の…それ以上の温もりも、優しさも、愛情も…
『…"愛情には1つの法則しかない。それは愛する人を幸福にすることだ"
千空が私に沢山の幸せをくれたように、私もあなたを幸せにしたい。だから、隣に居させてね』
「ククク、超絶安心しやがれ、お前を離す予定はねえよ」
『……ずるい』
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たくあん(プロフ) - 八つ橋さん» こんばんは!コメントありがとうございます! 全部読んでくださってありがとうございます!!( ; ; )温かいお言葉凄くありがたいです!更新頑張ります! (2021年1月17日 23時) (レス) id: f926544a9e (このIDを非表示/違反報告)
八つ橋 - こんばんは、夢小説面白かったです、全部見ました、お身体にお気をつけて下さい。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: ed846143d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2020年12月29日 21時