Z=126 ページ29
.
『おわぁ…!綺麗…』
「興奮しすぎだろ」
ゲンが天文台から全員を帰らせた後、照れて微妙に距離を空けるAの気分を変えてやるため、覗くか?と聞けば、トルマリンの目を輝かせ首を縦に振ったそいつ。
…俺へのプレゼントにしたはいいが、自分も欲しくなってんだろなこれは。
ケータイ作りと並行で作ってやるかと脳内で考えつつ、天体望遠鏡を覗いてる間に空いてた距離を詰めるも夢中になって気づきもしねえA。
少しすればゆっくり観て満足したらしい、ありがとうと笑うそいつに体が熱くなる。月にも太陽にも似合うその表情は俺の思考をバグらせるには充分すぎた。
「…もう満足か?」
『うん!ねぇ、また今度使わせてね』
「!…ククク、ああ、いいぜ」
『え、な、なに?』
予想外の言葉に思わず笑いが零れた。
俺には他人を喜ばせる力があるだのと言ってたがお前も大概そうだろうが。
「何もねえよ、人たらし様」
『それ、ほんとよく言うね!?前から思ってたけど人たらしは千空でしょ?』
「あ゙ぁ?なんで俺になんだよ」
『だってあなたに人としての魅力がなかったらきっとコハクは味方になってくれなかった。ゲンも裏切ってはくれなかった。
千空が村長になって誰も反発しなくなったのも、あなたの人としての力があるからだよ』
トルマリンの目が真っ直ぐと俺を捉えて、そいつは言った。
それを言うならお前もだろうが。そう言おうとすれば、ねえ、土星の神話知ってる?と話を変えられる。
『ローマ神話で、土星を司る神サートゥルヌスは人々に多くの農耕を教え、法を作り太古の黄金時代を築いたとされる。
そこからサートゥルヌスは文化英雄と呼ばれるようになった。彼の祝祭は後のクリスマスとも云われてるんだよ。
――この時期に見えるのが土星だったってのもあるけど、まさに千空みたいだなぁって。石神村の文明を発展させたし、クリスマスの文化も伝えた。あなたは、本当にすごい人だ』
あまりに仰々しいものだから思わず眉を顰めれば、なんでそんな顔するのと笑うそいつ。
子供みたいに表情が変わる割に、放たれる言葉はあまりにも壮大で、でもそれが藤咲Aという人間なのだと改めて実感した。
『…あ、そうだ、プレゼント』
「まだあったのかよ」
『い、一応…私個人からってことで…』
「皮袋…」
『今使ってるの端の方解れてきてたから…まぁよかったら使ってよ』
「よかったらも何も、ありがたく使わせてもらうわ」
173人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たくあん(プロフ) - 八つ橋さん» こんばんは!コメントありがとうございます! 全部読んでくださってありがとうございます!!( ; ; )温かいお言葉凄くありがたいです!更新頑張ります! (2021年1月17日 23時) (レス) id: f926544a9e (このIDを非表示/違反報告)
八つ橋 - こんばんは、夢小説面白かったです、全部見ました、お身体にお気をつけて下さい。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: ed846143d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たくあん | 作成日時:2020年12月29日 21時