第223話 ページ48
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随分長かった気がする。ここにたどり着くまで、幾度となく心が折れそうになった。
ずっと寂しかった。カナヲやアオイには相手がいる。だが自分はどうだ?想い続けた相手が同じ時代を生きているのかすらわからず、ただ願う日々。
――神様、もし、いるのならもう一度彼に会わせて下さい。
なんて。
だけど、神にも縋る思いだったんだ。本当にダメだと思った時もあったけど、やっぱり忘れられなくて。
私にはやっぱり貴方しかいなくて。だから、貴方と再会した時、本当に嬉しくて悲しかったんだよ。
なんで結婚してないこと黙ってたの。なんでお母さんだって教えてくれなかったの。私の反応が可愛かった?前世だったら絆されてたかもしれないけど、今は怒るからね!
――ああ、本当に、長かったのに、何だか一瞬だったみたいに思えてくるよ。
「A、綺麗…!」
『今日は特別な日だもん。とびきり綺麗にして驚かせなきゃ』
「ふふ、以前と違って、煉獄さん相手に強気ですねえ」
『ふふん、これからは私が杏寿郎さんを振り回さなきゃ!』
――用意も終え、式の最終確認と身だしなみをチェックしていると、みんなは先にチャペルへと向かった。
「お前もついに結婚かぁ…」
『お父さん、まだ泣くの早いからね』
パイプオルガンが聴こえてくると、勢いよく開く扉。一礼し、ヴェールダウンをしてもらい、ゆっくりと歩き出す。
――昔から変わらない。柔らかく、優しく、太陽のような温かい笑顔で迎えられ、彼の隣に立つ。
司祭の前で2人で愛を誓えば指輪交換をする。
『…ねえ、杏寿郎さん』
「ん?」
『今度は、一緒に"生きて"幸せになろうね』
「あぁ…勿論だ」
優しい口付けを落としてもらえば、チャペルに鳴り響く止まない拍手。おめでとう!と言う声と共にバージンロードを歩き、外でブーケトスを終えれば、始まった写真撮影会。
家族や友達と撮り終えた後、最後に自然と集まったのは前世で苦楽を共にした仲間たち。
何となく、泣けてきて堪らず涙を流せば、みんなにからかわれた。
そしてそんな様子もバッチリ撮られていたらしい。
――――――
「お母さん、この写真泣いてるの、どうして?」
『んー?嬉しくて泣いちゃったの』
「ふーん、変なの」
『ふふっ、いずれ分かるよ』
愛娘の頭を撫でてやれば、外から行くぞー!と優しい声が聞こえる。
はーい!と2人で返事をし、私はそっとアルバムを閉じた。
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たくあん(プロフ) - なな号さん» コメントありがとうございます!貴重なお休みを使って読んでいただいて嬉しい限りです(;;)完結して数年してからもそう言っていただけてありがたいです!こちらこそ嬉しいコメントをいただきありがとうございます(*ˊ ˋ*) (10月31日 22時) (レス) id: 909cf7c15b (このIDを非表示/違反報告)
なな号(プロフ) - すごいいい作品すぎて休日一日使って一気読みしてしまった。そして鬼滅にまたハマってしまった。ほんと素晴らしい作品ありがとうございます‼︎感動しまくりでした! (10月25日 0時) (レス) @page49 id: 98aa855e93 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!1年前に完結している作品にコメントいただけると思ってませんでした!笑 嬉しい限りです!!(*^^*)ありがとうございました!! (2021年10月2日 22時) (レス) id: 514b72b12d (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年10月2日 18時) (レス) @page49 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます! 感動していただけてよかったです!!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!閲覧していただきありがとうございました! (2020年12月2日 12時) (レス) id: 5567af4702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年11月5日 23時