第217話 ページ42
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目を覚ませば、真っ白なそこ。
…ここ、もしかして。
「やあ」
『……』
「随分と不機嫌な」
『目覚めて一番に見る顔があんただと…』
「つれないなぁ」
笑う男は"あの時"以来見ていなかった。
…が、またこの空間で、こいつを見るってことは…否、今度こそ私は、
『…死んだ?』
「まあ、そういうことだね」
『そっかぁ…』
自分の身体を見て、ぼふん、と私はその場に寝転がった。
「…まだ、生きていたかった?」
『そりゃあ、"大好きな漫画"だったし』
「!…全部思い出したの?」
『うん。とは言っても童磨の戦い辺りまでだけど』
「…続き、知りたい?」
私の顔を覗くそいつは、少し眉を下げてそう尋ねてきた。
『う〜ん…もし、また生まれ変わったら続き読めたりする?』
「さあ、それはどうだろう。君が生まれ変わる時代にもよるだろうけど」
…デスヨネ。みんなどうなったのかな、無惨倒せたのかな。
『……気になる』
「そう言うと思ったよ」
そいつは笑いながら前にも出してくれた小窓を開けた。
「これは、もう物語の"ほぼ"最後だね」
『…"ほぼ"?』
「ああ。本当の最後は教えられない。今はまだ」
『何それ…まあいいけど。こういう結末が待ってるなら、よかったよ』
「あぁ、君が望んだ"幸せ"なんじゃないかな」
『…うん』
パタン、と窓が閉まれば、さてと、と男は改めて私と向き合った。
「そろそろ私ともお別れだよ」
『へー』
「最後まで冷たいなあ」
『……で?結局あんたは"救われる"の?』
そう訪ねてみれば、少し驚いたような顔して、いつものように笑った。
「…優しいね、君は」
『寝覚め悪いもん。このまま救われなかったら。あの時無理矢理生き返らせたのはそっちなのに』
「ふふっ、それもそうだね。
…うん。今度こそ私も救われるよ」
『…そう、ならよかった』
ふっ、と笑ってそう言えばどこからが突然現れた扉。
「君は、"この世界"に来れてよかった?」
『うん。とびきりいい人生だった。大好きな人とまた会う約束もした』
「…そうかい。来世で巡り会えることを祈ってるよ」
『うん』
「では、お幸せにね、神凪Aさん」
振り返りざまに、ありがとうと言えば、少し哀しそうに、でもどこか嬉しそうに微笑んで、そいつは消えた。
――そして、私は白い光の中へと包まれていく。
…ねえ神様、どうか来世では…鬼の居ない平和な世界で皆が生きられますように。
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たくあん(プロフ) - なな号さん» コメントありがとうございます!貴重なお休みを使って読んでいただいて嬉しい限りです(;;)完結して数年してからもそう言っていただけてありがたいです!こちらこそ嬉しいコメントをいただきありがとうございます(*ˊ ˋ*) (10月31日 22時) (レス) id: 909cf7c15b (このIDを非表示/違反報告)
なな号(プロフ) - すごいいい作品すぎて休日一日使って一気読みしてしまった。そして鬼滅にまたハマってしまった。ほんと素晴らしい作品ありがとうございます‼︎感動しまくりでした! (10月25日 0時) (レス) @page49 id: 98aa855e93 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!1年前に完結している作品にコメントいただけると思ってませんでした!笑 嬉しい限りです!!(*^^*)ありがとうございました!! (2021年10月2日 22時) (レス) id: 514b72b12d (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年10月2日 18時) (レス) @page49 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます! 感動していただけてよかったです!!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!閲覧していただきありがとうございました! (2020年12月2日 12時) (レス) id: 5567af4702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年11月5日 23時