第201話 ページ25
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「Aなら居ませんよ」
「!」
任務後、蝶屋敷で胡蝶さんに手当てしてもらっていると、外を気にしているのを気づかれたのか不意にそう言われた。
「今日は煉獄さんの所へ行くって言ってましたねえ」
「…そうなんだ」
一言、そう返せば、つまらなさそうですね。とクスリと笑った胡蝶さん。
「知ってて言ってるでしょ」
「何をです?」
「……」
にこにこといつもの笑顔を浮かべる胡蝶さんはどこか楽しげだった。
…絶対馬鹿にされてるなぁ。
「ふふっ、すみません。時透くんが意地らしいものですから、つい」
「…だって、好きだから」
「ええ、知ってます」
傷口に薬を塗るとギュッと包帯を締められ、思わず歪む顔。
「(痛い…)」
"時透くん!血が出てる!こっち来て、止血するから!"
"時透くん、明日はお休み?一緒にお団子食べに行こ!"
"うわ!時透くんすごい…どうやってるのそれ…"
「…僕の方が先に出会って」
「?」
「僕の方が先に知って」
「……」
「僕の方が、多分…先に好きになってたんだ」
「…時透くん…」
「…っていう醜い気持ちがきっと"だめ"なんだろうなって最近思うよ」
独りごちるように言葉を紡いでいれば、それに耳を傾けてくれる胡蝶さん。
「"好き"に理屈も根拠もないし、自然と惹かれあったんだと思ったら….余計辛い」
「…」
「結局、出会った順番も、好きになった順番も関係ないんだ。それはわかってるんだけど、それでも"僕の方が"って思ってしまうから、まだ子供な自分が嫌になる」
窓越しに外を見上げると、そこに広がる青い空と、差し込む柔らかい優しい光。
「(温かい…Aを思い出す…)」
「…誰しも、誰かの特別になるわけではない」
「…!」
「至極当然のことなのですが、それでも信じたいですよね」
「…うん。少なくとも、僕はそう思いたい」
そう言うと、胡蝶さんは、はい、終わりましたよ。と作業していた手を止めた。
「頑張れ、とは言いづらいですが…応援してます」
「…ありがとうございます」
立ち上がり、戸に手を掛けた時、ふと思った。
「…ねえ、胡蝶さん」
「はい?」
「今後、どうなるかはわからないけど、少なからず今世では諦めるしかないと思うんだ」
「…?」
「
ふわりと優しい風が吹くと、胡蝶さんはふふっ、と笑って、応援してます。と答えてくれた。
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たくあん(プロフ) - なな号さん» コメントありがとうございます!貴重なお休みを使って読んでいただいて嬉しい限りです(;;)完結して数年してからもそう言っていただけてありがたいです!こちらこそ嬉しいコメントをいただきありがとうございます(*ˊ ˋ*) (10月31日 22時) (レス) id: 909cf7c15b (このIDを非表示/違反報告)
なな号(プロフ) - すごいいい作品すぎて休日一日使って一気読みしてしまった。そして鬼滅にまたハマってしまった。ほんと素晴らしい作品ありがとうございます‼︎感動しまくりでした! (10月25日 0時) (レス) @page49 id: 98aa855e93 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!1年前に完結している作品にコメントいただけると思ってませんでした!笑 嬉しい限りです!!(*^^*)ありがとうございました!! (2021年10月2日 22時) (レス) id: 514b72b12d (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年10月2日 18時) (レス) @page49 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます! 感動していただけてよかったです!!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!閲覧していただきありがとうございました! (2020年12月2日 12時) (レス) id: 5567af4702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年11月5日 23時