第199話 ページ23
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「おめでとう」
『……!?』
「2度見をするな。喧嘩を売っているのか?」
『い、いえ…。まさか伊黒さんが言ってくれるとは思ってなかったので…』
「あぁ、甘露寺に言われて言っただけだからな」
『でしょうね』
柱稽古の合間、たまたま伊黒さんと出会えば言われたのがそれだった。
「うつつを抜かして稽古を怠るなよ」
『わかってますよ』
…相変わらずだなあ。伊黒さんも早く蜜璃さんに言えばいいのに。
『(…なんて、余計なお世話だろうし、何より私が言える立場じゃないからな…)』
「…貴様、指輪は貰ったのか?」
『?はい、頂きましたよ。紐を通して首から下げてます』
ほら。と見せれば、煉獄に散々見せられた。と呆れたように言う伊黒さん。
…うん、容易に想像出来るな…… 。
「…少し、羨ましい」
『え?』
「貴様らが憚りなく、互いに隣に居られることが」
『…伊黒さん…?』
俺が知らないだけで、互いに何か隠してることくらいあるだろうが。と付け加えられ、少しドキリとした。
否めない。言っても言わないでももう"その記憶"はないのだから、変わらないだろうけど。
それでも言えない、私が"この世界の人間"ではないことなど。
「…当たり前を"当たり前"と思わないようにな」
そんな意味深な言葉と、みたらし団子をくれた伊黒さんは自分の屋敷の方へと歩いていった。
* * *
悔しいか悔しくないかで言えば、悔しい。
でも、そんな感情など、彼女の笑顔を見れば失せてしまうのだ。
それくらい、Aは綺麗に笑う。
『どうかした?時透くん?』
「ううん、団子美味しいね」
『ね!さっき伊黒さんに貰ったの』
隊士の皆には内緒。と小さく笑う彼女との距離はほんの少し。
なのに、とても遠く感じるのは、
「(彼女が、添い遂げる相手を見つけたから)」
『にしても怖いよね!?突然の差し入れ…』
「…おめでとうってことじゃないのかな」
『…あの伊黒さんが?』
怖い…と零すAに、笑ってしまえば、時透くんも思わない!?と同意を求められる。
「んー…そうだな…僕はまだ"子供"だから、そんな風に素直にお祝い出来ないな」
『え?』
「ご馳走様。そろそろ戻るね」
そう言って彼女の屋敷を後にした。
「本当に、子供だな…」
こんな醜い感情、彼女に見せたくない。
たった一言"おめでとう"が言えないのも、本当に情けない。
「……好きだよ、A…」
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たくあん(プロフ) - なな号さん» コメントありがとうございます!貴重なお休みを使って読んでいただいて嬉しい限りです(;;)完結して数年してからもそう言っていただけてありがたいです!こちらこそ嬉しいコメントをいただきありがとうございます(*ˊ ˋ*) (10月31日 22時) (レス) id: 909cf7c15b (このIDを非表示/違反報告)
なな号(プロフ) - すごいいい作品すぎて休日一日使って一気読みしてしまった。そして鬼滅にまたハマってしまった。ほんと素晴らしい作品ありがとうございます‼︎感動しまくりでした! (10月25日 0時) (レス) @page49 id: 98aa855e93 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!1年前に完結している作品にコメントいただけると思ってませんでした!笑 嬉しい限りです!!(*^^*)ありがとうございました!! (2021年10月2日 22時) (レス) id: 514b72b12d (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年10月2日 18時) (レス) @page49 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます! 感動していただけてよかったです!!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!閲覧していただきありがとうございました! (2020年12月2日 12時) (レス) id: 5567af4702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年11月5日 23時