第163話 ページ33
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『カナヲ、手紙のことは黙っててね』
「!」
アオイに手当てをしてもらったあと、2人まとめて同じ部屋で寝かされていた。
「…師範は何も知らないの…?」
『…うん。寧ろ、知ってるのはカナヲだけだよ』
彼女の方を見て言えば、えっ、と声を漏らした。
『…本当に、凄く腕のいいお医者様なの。心配ないよ』
「…けど、報告したら結局分かるんじゃ…」
『うん。だから、隠す』
「どうやって……」
そう言われ、にこりと微笑んで、お休み。と話を終わらせる。
…ごめんね、カナヲ。けど、しのぶさんには、言えないから。
"鬼から人に戻す薬を作る鬼"に、助けられてるなんて。
『(皮肉なもんだな…鬼が人のために薬を作り、人が鬼のために薬を作るなんて…)』
…世界は、残酷なんだな…。
『(…あの男の受け売りみたいで嫌だけど、実感するよ)』
はぁ…と一息吐き、私は眠りについた。
―――――
「おはよう、A。そろそろ来る頃だと思ってたよ」
『え』
翌日。
お館様の元へ訪れると、開口一番に言われたのはそれ。
『ど、どうしてです…?』
「何となく、じゃだめかな?」
と、悪戯っぽく笑うお館様が最高に可愛かったので、大丈夫です。と即答してしまえば、ふふっ、と再び笑うお館様。
「それで?何をして欲しいんだい?」
『(わあ…全部お見通しなのかな…)
…珠世さんは、ご存知ですよね?』
「あぁ、知っているよ」
『私は彼女に助けられました。定期的に自分の血を送り、薬を作って貰っています』
「そうか…」
『…その薬が、先日完成したとの一報を頂き、早ければ今日この後…若しくは明日の早朝、彼女の元へ向かいます。
…私は…ちゃんと、人間に戻ります』
そう言い切れば、お館様は手を引かれながら私の元へと来る。
「わかっているよ。心配しなくても大丈夫」
『…!』
「…Aの中にある想いや信念…それさえ持ち続ければそれが"永遠"になるんだ。
悪鬼にはない…人の心だから宿るものなんだよ」
優しく微笑むお館様のその言葉が、私の心に深く刺さる。
『(想い…信念……)』
「Aは、優しくて強い。自分が思っている以上に、君は凜とした子なんだ。
…だから、皆に"嘘"をつきたいんだね」
『…はい』
人に戻ることは言う。けど、"どうやって"、"誰が"、は伏せておきたいのだ。
…まだ今は。
「心配せずとも大丈夫。皆、真っ先に喜ぶはずだから…。
安心して行っておいで」
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たくあん(プロフ) - ひまわりさん» コメントありがとうございます!!(*´`*)嬉しいです!( ; ; )かなりの話数なのに!( ; ; )ありがとうございます!続編でも頑張ります!(*^^*) (2019年11月6日 12時) (レス) id: 217fb630d3 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり - コメ失礼します!一気読みしちゃうくらい面白かったです!続きを楽しみに待っています\(^o^)/ (2019年11月5日 23時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - こね子さん» コメントありがとうございます!!めっちゃ嬉しい( ; ; )楽しんで頂けてよかったです!更新頑張ります!(*^_^*) (2019年11月1日 12時) (レス) id: 9978d450db (このIDを非表示/違反報告)
こね子 - すんごく面白いです!!今日、1話から一気読みさせて頂きましたが!先の展開が読めなくて続きが気になって仕方ない!!笑 更新楽しみに待ってます! (2019年10月31日 21時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ゆりかもめさん» コメントありがとうございます!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!!( ; ; )リクエストもありがとうございます!余裕が出てきたら書かせていただきますね!!(*^^*) (2019年10月27日 19時) (レス) id: 4fbafed690 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年8月9日 0時