第155話 ページ23
.
夜――蝶屋敷の庭に1人佇む。
『(月、綺麗だなあ)』
ぼーっと空を眺めていれば、視界に入るのはヒラヒラと舞う蝶。
「何か悩み事ですか?」
『!…しのぶさん…』
ふわりと私の隣に座れば、いつもの柔らかい微笑みを浮かべるしのぶさん。
『……』
「言いたくないなら言わなくていいですよ」
『…すみません』
「ただ…1人で抱え込むのは違いますからね」
そう言って人差し指を立てて言う彼女に少しだけ圧されつつ、はい…と小さく返事をすれば、頭を撫でられた。
「…何事も吐き出すと楽ですよ」
『……実弥さんに、同じことを聞いたら頸を斬られそうになりました』
「?」
『私、このまま鬼でいる方がいいかも…――』
と、そこまで言ったところで、パチン…と乾いた音が響いた。
「…正気ですか?」
『…鬼の身体の方が…都合はいいです』
「A、いらっしゃい」
手を強く引かれ、連れてこられたのはいつもの診察室。
しのぶさんはバサリ、と書類を置いたかと思えば、貴女の診療録です。と一言。
「見方ならわかるはずです。よく読んでください」
『…!』
…まあ、そうだろうとは思っていた。
『("普通"じゃないから…こんなの、身体が慣れるわけがない…わかっていた。わかっていたけど…)』
「幸い、自然に記憶が戻ったので脳への負担はないでしょうが…以前とは違って心臓だけでなく、全身への負担が増えてます。
自分では気づけないでしょうけど、確実に鬼の細胞に身体が蝕まれています」
『……』
「何を思ってそう言ってるのか、凡その検討はつきます。貴女の事ですから、身体が欠損しても戻るなら、一層のことそのままで、くらいでしょうか」
『(まぁ、バレるよなぁ…)』
返事が出来ずにいれば、A、と名前を呼ばれる。
「それは不死川さんも怒ります。私達は、貴女を犠牲にして生きたい訳じゃない」
『!』
「共に戦い、それでも散るのであれば、それでいいです。それが、鬼殺隊です」
『……』
「命を賭して煉獄さんや宇髄さんを守ったのは素晴らしいです。けれど、彼らの気持ちも、もう少し考えてあげて下さい。
好意を寄せている女性に守られ、治るとはいえ自分の所為で怪我をさせた、と思うしかありませんから」
『!』
…そうだ。助けたい一心で戦っていたけど、彼らの気持ちを蔑ろにしていた。
「…少し頭を冷やしてください」
『…すみません、ありがとうございます』
1529人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たくあん(プロフ) - ひまわりさん» コメントありがとうございます!!(*´`*)嬉しいです!( ; ; )かなりの話数なのに!( ; ; )ありがとうございます!続編でも頑張ります!(*^^*) (2019年11月6日 12時) (レス) id: 217fb630d3 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり - コメ失礼します!一気読みしちゃうくらい面白かったです!続きを楽しみに待っています\(^o^)/ (2019年11月5日 23時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - こね子さん» コメントありがとうございます!!めっちゃ嬉しい( ; ; )楽しんで頂けてよかったです!更新頑張ります!(*^_^*) (2019年11月1日 12時) (レス) id: 9978d450db (このIDを非表示/違反報告)
こね子 - すんごく面白いです!!今日、1話から一気読みさせて頂きましたが!先の展開が読めなくて続きが気になって仕方ない!!笑 更新楽しみに待ってます! (2019年10月31日 21時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ゆりかもめさん» コメントありがとうございます!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!!( ; ; )リクエストもありがとうございます!余裕が出てきたら書かせていただきますね!!(*^^*) (2019年10月27日 19時) (レス) id: 4fbafed690 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たくあん | 作成日時:2019年8月9日 0時