第137話 ページ3
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準備を終え客を迎えようとしていた時、禿の子達がバタバタしているのが見えた。
『ねえ、何かあったの?』
「あ、Aちゃん!あのね、実はさっき…」
「見いつけた」
『!』
その声にゾクリと背筋が伸びた。
…なんだ、この感じ…姿も捉えてないのに心臓がうるさい…。
「君だよ、君」
そう言って私の肩に触れた男。振り返れば、"ソレ"は、
『(鬼…)』
「この間、お店に来た時に一目惚れしたんだ。少し離れた場所から見てたんだけど、綺麗な芸だったね。
まるで、"千ぐさ屋"の"藤雪花魁"だった」
胡散臭い笑みを浮かべ、そう言う男。
…コイツ、間違いない。
『(この間の鬼だ…)』
「…よく見れば、顔立ちも少し似ているのかな?」
『……お世辞が上手なお客様ですね』
「世辞なんかじゃないさ。本心から言ってるよ。それより座敷へ行こう。もう君を指名しているんだ」
『はい』
そう返事をし、男が前を歩き出した所で、さっきの禿の子に耳打ちをした。
『ねえ、後で話聞かせて』
「?うん…」
頭を撫でてやれば、駆け足でどこかへ行ったその子。
『(嫌な予感がする……善逸…大丈夫だよね…?)』
――――――
「何だか上の空じゃないかな?」
『いえ、お客様の前でそんなこと出来ませんよ』
「そうかい?」
笑いながら私の手に触れるその男。
…コイツほんと胡散臭い鬼だな…あの時口めちゃくちゃ悪かったくせに…普通に引くわ。
『(まぁ人の事言えないけど…って、そうじゃない、気を張っておかないと…)』
「…楽しい話をしようか?」
『え?』
ズイッと私の耳元へ顔を近づけるソイツ。
「もう"今の"お前の事は"蕨姫花魁"に言ってる。逃げ場はねえぞ」
『ーーっ!!』
パシィン!と乾いた音が鳴り響き、座敷中の視線が私達へと向けられる。
「…危ないね。どうかしたかい?」
『いえ、貴方の頬に虫が居たもので』
平手打ちをしようとした手は止められ、ぎゅっと握り締められる。
「どうかしたか!?」
「ああ、旦那。何もないよ、気にしないでくれ」
「そうか…」
「彼女、具合が優れないみたいなんだ。今日は帰るよ」
鬼は私の手を離すと、ぽん、と手品で花を出し、私の髪に差した。
「"また"ね」
『…ええ』
鬼を玄関まで見送り、部屋に戻ってから花を取ろうとすれば、ピタリと止まる手。
『……』
日輪刀で髪ごと少し切れば、サラサラと消えていく花。
『舐めた真似を…』
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たくあん(プロフ) - ひまわりさん» コメントありがとうございます!!(*´`*)嬉しいです!( ; ; )かなりの話数なのに!( ; ; )ありがとうございます!続編でも頑張ります!(*^^*) (2019年11月6日 12時) (レス) id: 217fb630d3 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり - コメ失礼します!一気読みしちゃうくらい面白かったです!続きを楽しみに待っています\(^o^)/ (2019年11月5日 23時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - こね子さん» コメントありがとうございます!!めっちゃ嬉しい( ; ; )楽しんで頂けてよかったです!更新頑張ります!(*^_^*) (2019年11月1日 12時) (レス) id: 9978d450db (このIDを非表示/違反報告)
こね子 - すんごく面白いです!!今日、1話から一気読みさせて頂きましたが!先の展開が読めなくて続きが気になって仕方ない!!笑 更新楽しみに待ってます! (2019年10月31日 21時) (レス) id: 22b40083c6 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ゆりかもめさん» コメントありがとうございます!(*^^*)めちゃくちゃ嬉しいです!!( ; ; )リクエストもありがとうございます!余裕が出てきたら書かせていただきますね!!(*^^*) (2019年10月27日 19時) (レス) id: 4fbafed690 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年8月9日 0時