第89話 ページ47
.
時透無一郎は、怒っていた。
「(Aの消息が不明…?生死もわからない…?煉獄さんも重症…?)」
鎹鴉による神凪A・煉獄杏寿郎の情報は瞬く間に広まり、柱は勿論、下級の隊員にまでも届いていた。
「……」
竹林をスタスタと歩く無一郎は、ピタリと足を止めると、一瞬で刀を抜き、周囲の物全てを一刀両断にした。
「(悔しい…ただただ、悔しい!!)」
…何故あの場に自分は居なかったのか。柱2人を以てしても、上弦には敵わないのか。何故、何故…
「(大事な人を…悉く鬼の手によって…失くしてしまうのだろうか…)」
…満身創痍で闘い抜いて、最後は煉獄さんの腕で微笑みながら遺した言葉。
『"だいすき……ありがとう……"』
「(最期まで彼女は、己を貫いていたんだ…)」
…最後に会ったのはいつだっけ。休暇の時に一緒に甘味処に行った時かな。あそこのみたらし団子、美味しかったな。
…美味しそうに、食べてたなぁ。
『"お団子、美味しいね!"』
「"Aと一緒に食べるものなら、僕はどんなものでもきっと美味しく感じるよ"」
『"な、なにそれ…恥ずかしい…"』
「"照れるAも可愛い"」
『"あー!あー!やめてくださーい!"』
「(今でも鮮明に思い出すよ、Aと過ごした時間のことは…)」
…優しい声で、柔らかい笑顔で、我慢強くて、温かな人だった。
決して自分のことで泣くような人間ではなかったから、君が泣いた時、僕はどんなものからも君を守りたかったんだ。
最終選別で、救われたから、僕も君を救いたかった。
…なのに、
「僕はっ…なにをしてるんだ……っ!」
* * *
…死んだ訳では無い。そう思いたかった。
宇髄天元は自分の屋敷の縁側から、じっと庭を見つめていた。
「(初めて会った時…キレイだって言われたんだったっけか…)」
…呟いたつもりなのだろうが、ガッツリと耳に届いたその言葉。初めは"柱候補"だからという理由で関わっていたが、関われば関わるだけ、どんどん彼女に惹かれていた。
『"天元さん!今度は海へ行きましょう"』
『"天元さん、無茶ばかりしてるでしょ。ダメですよ"』
『"天元さーん!"』
「…A…」
いつからだろうか、彼女を自分だけのものにしたいと思ったのは。
「…好きな女を手に入れないまま失う方が辛いって、」
言っただろうが…。
呟いた俺の言葉は強く吹いた風に掻き消されるようだった。
「…頼むから、生きててくれ」
1255人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たくあん(プロフ) - ロアさん» コメントありがとうございます!!柱なので頑張ってもらっちゃいました!!!((笑 ありがとうございます( ; ; )頑張ります( ; ; ) (2019年12月27日 0時) (レス) id: 0c6fafeba7 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 夢主ちゃん、下弦とのエンカウント率高www((更新頑張ってください!! (2019年12月22日 16時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ふらんさん» コメントありがとうございます!!ご期待に添える展開に持っていけるか不安ですが、更新頑張っていきます!!ありがとうございます( ; ; ) (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ピースサインさん» コメントありがとうございます!!面白いって言って頂けて本当に嬉しいです( ; ; )更新頑張ります! (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - 葵咲さん» コメントありがとうございます!( ; ; )うおお…う、嬉しい…!( ; ; )更新頑張ります!( ; ; ) (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たくあん | 作成日時:2019年6月25日 1時