第13話 ページ15
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その日の夜。とりあえずしのぶさんの住む蝶屋敷で寝ることになった。
『……』
…どうすればいいのだろうか。お館様は厚意で言ってくださってる。でも、いくら原因不明とは言えど、この段階で戦線から引くのもな…。
はぁ、と溜息を零し、ふと窓の外を見る。
『(雨だ…ああ、やだな。雨ってだけで余計鬱になる…)』
頭も痛くなる。心做しか心臓も痛い。
…どうしたいんだろう、私は。平穏な暮らしを送りたい。でも、そんなの鬼が蔓延るこの世の中で可能なの?しかも私は稀血だぞ?
『(師範の所に戻ったところで、迷惑掛けるだけだ。それならやっぱり、無茶してでも鬼殺隊に身を置く方が師範の為にもなる…。自己防衛は必須だけど)』
でももし、これから先、私の所為で要らぬ怪我をする人を増やしてしまったら?それこそ取り返しがつかないのでは?いや、まあそうならないように努力はするつもりだけどさ。
『(…ダメだ、思考が完全に堂々巡りだ。どうしよう…)』
「A」
『びっ…!?えっ…と、時透くん…!?どうしたの…?』
水を持って突如現れた時透くんは、許可貰って入ってきた。と、私の隣に腰を下ろした。
「…昼間、辛そうだったから」
『ああ…うん…まあ…』
「…僕は別にいいと思う」
『え?』
「戦線から引いても」
そう言って私を真っ直ぐ見つめる時透くん。
「僕は、Aと少しでも長く一緒に居たいと思うよ。柱になったら今までよりももっと会えるとも思った。けど、それでAが長生き出来なくなるなら、引いてもいいと思った」
『時透くん…』
「余計な責任を負わせるつもりはないって、お館様は言ってた」
『……』
「どうするの?」
改めてそう尋ねられ口を噤んだ。
…だって、結局、何をしたって迷惑は掛かってしまうのだ。何が最善なのか、今の私にはわからない。
『…わかんない…』
「……」
『わかんないよ…どうすればいいのか…』
「…どうして?」
『だって、鬼殺隊を辞めたって鬼に狙われるだろうし、続けてたって周りを巻き込んじゃうんだ。なら、もう…いっそのこと…』
と、その時、手で口を塞がれる。
「最終選別の時のAなら、多分迷うことなく戦うことを選んでたよ」
『!』
「少なくとも僕は、Aに助けられてる。だから、言わないでほしい」
そう言われてポロポロと流れ出す涙。
『ありがとう…っ!』
「泣かないで、笑ってよ」
『うう…!』
「変顔になってるよ」
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ヘル - WW (2021年5月22日 0時) (レス) id: 8a8dc3fa13 (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 第45話で絶対たまたまだけど名前出て一人で喜びの舞踊ってた→見られてた→\(^o^)/ (2020年7月20日 0時) (レス) id: 0b06ea8062 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - せりりんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^ ^*)更新頑張ります!! (2019年6月24日 18時) (レス) id: 17eabedad2 (このIDを非表示/違反報告)
せりりん(プロフ) - 感動しました!炭治郎流石って感じです! (2019年6月24日 17時) (レス) id: 60b1ee46a3 (このIDを非表示/違反報告)
せりりん(プロフ) - 凄いてんかいっすね! (2019年6月24日 17時) (レス) id: 60b1ee46a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年6月12日 0時