押しが強すぎるよ轟くん (ページ10)

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episode：8 ページ10

「と、友達からで」

それだけだった。ここが夢小説の中なら、「分かった」と言ってくれるはず。

「いやだ」

いやだ

まさかの言い分に轟くんの顔を見る。なに、その表情。胸がぎゅっと締め付けられる。
男の顔。再び引き寄せられるからだ。近くなる距離。顔。なんでこんなにアダルティなの。

ん？アダルティ・・・

まさか、ここ。夢小説は夢小説でも

「鎖渡・・・」

胸が痛い。

「好きだ」

心音がうるさい

「好きなんだ」

甘い声

「お前がいい」

「い」

いい加減にしてっと言おうとした。
でもそれは違う子にさえぎられた。

「いい加減にしろ！！A姉が困ってるだろ！そんなにA姉がいいなら！俺を倒してからにしろ！」

振り返ると、中学生の施設の弟分が指をさして怒っていた。その姿はどこか爆轟君に似ている。

「あれAじゃーん」
「え、ほんとだ男といる。やばーチョーイケメンじゃん。なに彼氏？」

よくよく見るとここは施設の近くだった。どこの学校も帰宅時間。施設の家族たちが続々と集ってきた。

「鎖渡。お前兄弟どんだけいんだよ」

「えっと、これは」

「あらあら皆してどうしたの？」

すると施設の方向からエプロン姿の先生が出てきた。

「阿久堂(あくどう)先生。ただいま」

「先生？」

学校の先生以外言わないようにしてたのに。

「えっと。兄弟は兄弟だけど。血は繋がってなくって」

皆察して私のそばに近寄ってきてくれる。

「私孤児なんだ。阿久堂孤児院。皆そこの孤児。大切な家族だよ」

「ごめん。お茶しかなくって。すぐジュースなくなっちゃうから」

「いや。大丈夫だ」

施設の本来里親と話すところの部屋で向き合う。窓や扉の影から皆が見ている。
轟くんがお茶を飲む。

「なんでだめなんだ」

コップから口を離して発した言葉はそれだった。目撃していた施設の女子がキャッと声を出す。

「まだ、お互いのこと知らないし」

「恋人でもいいだろ。知るのは」

「私、孤児だし」

「だからなんだ。鎖渡は鎖渡だろ。俺は鎖渡だから好きになった。だからそばにいたい」

黄色い悲鳴が聞こえる。できるなら私もそっち側がよかった。本当に、夢小説の終盤のセリフでしょ。それ
私が何も言わないでいると、なら、と口を開いた。

「３か月くれ。絶対に惚れさせてやる」

悲鳴が最高潮になった。視線が痛い。そう、こんなイケメンからの告白断るわけないよな。の視線である。

「３か月、なら」