episode：7 ページ9
あの後、理由をつけて脱兎の如く逃げた。
今日は授業を受けたら即帰ろう。すぐ帰ろう。
最後の授業終わりの鐘が鳴る。
「では今日の授業はここまで。また明日」
先生がそう言った直後。荷物をまとめて席を立つ。今日のことを聞こうとするクラスメイトが席を立ち口を開く前に教室を出た。
階段を下りて、見えたのは玄関。と
「お疲れ。鎖渡」
がくりと膝から崩れ落ちる。ここは夢小説の中。だからこそ、こうならないようにと走ったのに。
轟くんが焦ったようにこちらに駆け寄ってくる。どうやら階段を踏み外して転んだと思ったらしい。
「大丈夫か？」
「うん平気」
階段の手すりをもって立ち上がる。
「この後、時間あるか？」
「ごめんけど、忙しいから」
そう断ると、玄関で靴を履き早歩きで歩き始める。隣には轟くん
「なんでついてくるの」
どんどん早くなる足。
「帰宅中だけでも話したくて」
いつのまにかランニングをしながら話していた。
「なんで、来なくなったんだ」
まだ聞くんだそれ。さすがヒーロー科ともあり、息一つ乱さす話す轟くん
「・・・足痛めたの。健切っちゃって」
あらかじめ用意しておいた嘘を言う。
「そうだったのか」
無言の時間。軽快な走る音だけが聞こえる。
「もう大丈夫なのか？」
「じゃなきゃ、走って、ない」
段々切れていく息。
「それもそうか。鎖渡」
「なに」
「好きだ」
いきなりの発言で足がもつれた。轟くんは分かっていたかのように私を支える。
まって早くない？轟くんは天然で、夢小説なら最後や中間でこういうのに気づいてなんやかんやあって想いを伝えるものでしょう。
そう文句を言いたかった。しかし、真剣な顔が私を見つめてくる。それだけで、ぶわわっと顔が赤くなるのが分かった。
「えっ、えっと」
ぐるぐると思考が回る。好きだ、顔がいいの二つが頭を埋め尽くす。返事を促すかのように、私を支える手に力が入る。
ドッドッドと心臓の音がうるさい。
「鎖渡」
顔が、顔が近い
「あ、A姉だ！」
知っている声が聞こえた。そちらを見ると、同じ施設の小学生達。
「弟か？」
轟くんがそう聞く。
「う、うん。そんな感じ」
施設の弟分の視線が轟くんが抱いている腰の手に行く。慌てて離したがもう遅かった。
「お前、A姉の彼氏？」
じとっと弟分が轟くんを見る。
「それは、Aの返事次第だ」
じっと轟くんが見てくる
私の答えは・・・
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作者名：あおい | 作成日時：2023年4月15日 21時
