押しが強すぎるよ轟くん (ページ14)

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それから、お互い忙しい日々を送り、体育祭になった。
大勢の目に晒さされて、まぶしい日差しに晒されてくらくらする。
爆轟くんの宣言でさらにくらくらする。

第一種目開始
くらくらする視界の中。列に並ぶ。私だって雄英生徒。やるからには勝ちたい。
確か第一種目の時は。
必死にだいぶ前に読んだ話を思い出す。そうだ、あの時確か
スタート開始と同時にひやりとした冷気が漂う。

「嘘ぉ」

凍った足。知っていたけど、生でみると桁違いすぎる。ほとんどの生徒が凍ってもたついている。私が見るのは彼の背中。それが輝かしくて、彼との差を思い知って、悔しくて涙が出た。その涙は全て目隠しが吸い取ってくれた。

くやしいくやしいくやしい

私にもそれぐらいの力があれば

皆を助けられた

救えなかったあの子たちを救えた

結局。第一種目で私は脱落した。近くにあった空き缶を蹴ってゴミ箱に入れる。

「お疲れ。残念だったね」

ひらひらと手を振っているのは施設の院長。阿久堂先生だ。私の、天敵。
でも、それを表に出してはいけない。

「はい。あんなの反則です」

「おやおや。Aの彼氏だろ」

「彼氏でもライバルはライバルです」

近くの自販機にお金を入れながら答える。
すると１０円足りず、しかなく１００円の水を買おうとする。しかし、横から先生が１０００円をいれて「頑張ったご褒美」と笑う。
一見すると、本当に子ども想いのいい先生だ。
私は目的のボタンを押す。

「鎖渡」

名前を呼ばれてそちらを見る。そこには通過２位の轟くんがいた。

「落ちたんだな」

「轟くんが凍らせたからね」

「・・・」

「謝ろうとかしないでね。私達は恋人である前にライバルなんだから」

轟君が口を開く前に私は釘を刺した。先生はいつの間にかいなくなっていた。
先生が残したお釣りでお金を再度入れる。

「頑張ったご褒美」

自販機を指さす。轟くんは驚きながらもそのままボタンを押した。残りのお釣りは適当に使おう。

「鎖渡」

「なに？」

「なんで里親拒否してるんだ？雄英ならどんな家でも引く手数多だろ」

プルタブを押し開けながら轟くんは尋ねてきた。

「私が雄英にいる間、この施設から雄英が出たってだけで、価値があるの。卒業までしたならなおさら。それだけだよ」

「そうか。なら、どうしてヒーロー科にいかなかった」

その問いに、私は少しの間をおいて口を開いた。