episode：９ ページ12
「こんなところにいたのか」
あれから本当に轟君は黙ってくれた。来るのは施設だけだった。のだが、お昼ご飯の時間。とうとう私の場所が見つかったらしい。
薄暗い人の来ない場所。普段の押しの強い態度。
ぶわわと顔が赤くなり、自然と距離を取る。私の勘が正しければ、この夢小説は年齢制限のかかるタイプの夢小説だ。
「鎖渡」
隣に腰かけて売店から買ったのか袋を広げた。
「なんでばれたの？」
「光に弱いって聞いてたから手当たり次第に探してた。それだけだ」
パンの袋を破り、口に入れる。その唇に目が行き、何を考えているんだ私はと頭を振る。一息ついて、再び弁当に目をやった。
リップ音が鳴った。
その意味に気づいて顔がまた赤くなった。
「な、なな」
「鎖渡が見ていたから」
ギシっと厚いマットレスの音が鳴る。それが変に意識させる。
弁当をもって後ずさる。覆いかぶさるように追ってくる轟くん。
「轟くん。ごはんは？」
「食べた」
「私はまだだよ」
「そうだな」
ギシっとまた音が鳴る。やばいやばいやばい
この状況を打破しなければいけない。そう思っていた。
「爆轟！やっと見つけた」
歌川さんの声が聞こえた。その後喧嘩腰の声が聞こえて、悲鳴が聞こえた。どうやら彼女の個性が発動したらしい。
そして、彼女の個性の範囲に入っていたらしかった。
ずるっと手汗で滑りマットレスに寝そべる私。そして私の膝に当たる固い感触。
覆いかぶさる轟くん。
「轟くんあの」
不可抗力とはいえ、触ってしまったそれ。その表情で分かってしまった。確信してしまった。この夢小説は年齢指定だと。
頬を撫で上げられ、足をゆっくりと撫で上げられる。
「A」
やめて。そんな興奮した目で見ないで
どんどん上っていく手に焦りと恥ずかしさが募る
「どうして私なの！」
気をそらすために行った言葉。それに轟くんは動きを止めてくれた。
「鎖渡が毎日。頑張っていた。素性の知らない俺に毎日毎日声をかけて、それが支えになって、今日も会えると思うと頑張れて、あの野郎のことも家のことも何もかも忘れて。気が付いた時には、好きになってた。だから、お前が足を壊したって聞いた時、納得と同時にそばにいれなかったのが悔しくてしょうがなかった」
「轟くん」
「だから、なんとしてでもそばにいたくて、お前の一番になりたくて」
また唇が合わさる。
「Aのこと、もっと知りたい」
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作者名：あおい | 作成日時：2023年4月15日 21時
