押しが強すぎるよ轟くん (ページ2)

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私が転生者だと気づいたのは、大厄災の日だった。

目の前で両親が瓦礫に埋もれ、日に焼かれる姿を見て絶望にうちひしがれている時に思い出したのだ。

しかし当時はまだ齢10歳にも満たず、その現実を受け入れるのにはあまりに酷だった。
気がつけば、同じように身寄りのない子ども達がいる養護施設にいた。
年齢はまばらで、個性的な服を着た大人が何人もいた。

すると、小さな男の子がお絵描きをしていた。

「何を描いてるの？」

「お父さんとお母さん！」

男の子は屈託のない笑顔でそういった。彼は現実を受け入れず、そんなことをしているのでない。「迎えに来る」と、両親が来ることを疑っていないのだ。
両親がもう迎えに来るなんてことがあるはずがない、と理解できる年齢ではないのだ。

ふらふらとした足取りで街を見る。

一面の赤

熱気が離れていても伝わってくる。何故が、決して見えないはずの距離にいる逃げ惑う人が見えた。暗い瓦礫の下にいる人が見えた。
ぼーっと何も考えずにそれを見ていると、目を塞がれた。

「おいで」

優しく、大人が手を引く。
ふと、見覚えのある姿が見えた。その人を見た瞬間、ここがどの世界なのか理解した。
そして、この大人がどんな存在なのかも理解した。

引かれるままに動かしていた足を止める。
大人はしゃがみこんで私を見つめる。

私はまだ子ども。

大人の袖を引いて先程見ていた方へ指をさす。

「困ってる人がいるの！助けて！ヒーロー！！」

その言葉を、ヒーロー達は拾ってくれた。

そう、ここは、この世界は

ヒーロー達が指をさした方へ向かっていく。その背中を見つめながら、私は転生前に何度も思っていたことを後悔した。

こんなに残酷な世界だなんて思わなかった。

下唇を噛んで、街を見る。見えるはずのない距離、場所。これが私の個性なのだろう。見たくなくて、見えたものから聞こえる幻聴が気持ち悪くて耳と目を塞ぐ。

「大丈夫」

後ろからあの声が聞こえる。

「なぜなら」

後ろを振り向く。それはよく知った姿で

「私がきた」

大人は飛び出していった。