6話 ページ6
「わぁ…」
「馬鹿そうな声出さないで、馬鹿が移るから」
リノさんにズンズンと引きづられるように歩いた先に付いたのは、どこか扉から凄そうな部屋。そしてさりげなく言われた悪口に横目で睨むと知らぬふり。何この人。
そんな私にお構いなく、リノさんはコンコンと軽く扉をノックし「ヒョン、入るよ」とだけ言った。
「ひょえ……」
そこにいたのは一目でアイエンさんが言っていた『リーダー』だとわかる風格を持っていて、自然と態度が畏まる
「ああ、起きたんだ。ごめんよリノ、その子のこと任せっきりで」
リノさんはそう言われるとにこやかに笑って退出した。あんな笑顔見た事ない。びっくりするくらいに目が笑ってなかった、怖いのはそっちだよって今なら元気に突っ込める気がする。
「Aちゃんもごめんね、リノはああいった一面があるんだ。でも普段は優しくて可愛いくて良い子なんだよ」
「そうなんですね……」
「うん、そうなんだ。………そして早速本題だけど。どうやって君はここまで来たのかな？この屋敷にはアイエンが連れてきてくれたんだよね、だからこの森にどうやって来たか、だよ。」
正直、リーダーさんはもっとゴツくて怖い人なのかと思っていたけれど全体に纏っている空気が優しくまだ不慣れな私も息やっと上手く吸えるようなそんな感覚があった。
でも気は抜けない。抜いちゃダメ。
「えっと、信じてもらえるかは分からないんですけど交差点でトラックに轢かれて……ああ死んだな〜と思ったんです。でも気づいたらこの森にいて、さまよっていたらアイエンさんが助けてくれたという感じです。」
「あぁ、そういうパターンか…。」
私の話を聞いて、考え込むように手を顎に当てるリーダーさん。やっぱりこの人も凄いイケメンで、もしかしたら死ぬ前にイケメンに囲まれたい私の意思が生み出した偶像のような気さえしてきた。
「本当にごく稀にあるんだよね、君みたいな人間がこの世界に迷い込むこと。最後に迷い込んだと聞いたのは俺もまだ産まれてない時かなぁ…………。何百年前だろう。まあそれはいいんだけど」
まって、良くない。何百年って、何！？
「ごめんね、よく分からないよね。でもそういうものとして深く考えず受け止めて欲しいんだ。ここは今まで君が生きていた世界じゃない。だけど安心して、次の満月には元の世界に戻れるはず。外は危険だからそれまでなら俺たちの屋敷で面倒を見てあげられる」
……もう、どういうことなんだろうか。
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作者名：人間 | 作成日時：2024年1月7日 20時
