アニマルセラピー 【 特殊審神者 】

アニマルセラピー7日目 ページ8

.






赤は、好きじゃなかった

赤くてあつい輪の中に飛び込まなければ叩かれた
ひとのきげんを損ねた動物は、赤の血が流れるでなぐられた


赤は
恐怖の象徴のような、圧倒的な色。


でも、…俺たち命あるものが

生き物であるという証明をつなぐものも。赤い血だった


仲間が…叩かれ、蔑まれる場を
まるでべつの世界のように見れてしまうことに
もう、俺は生き物ではないのだろうか。そう思うことがたくさんあった。

それでも
自分が殴られ叩かれ切られたとき、赤い血が流れたとき


まだ
生物だと

安心できた


あの時
俺は狂っていたと理解している

けれど、恐怖と痛みは全てをおかしくする




「……くぅぁ…」


燭台切「!!
おはよう、雪くん」


「ん〜…おはよう、
……まだお昼…?」


燭台切「3時になる頃かな、
どちらかと言うと夕方だね……本丸の方は歌仙くんがおやつの準備してくれてるだろうし…
僕達もお茶にする、?」


「…?おちゃ?
俺、水しか飲めない…」


燭台切「あ、そっか…
普通に喋れるから…つい人と同じ感覚で…
なら雪くんは水とこんのすけ君が置いてったジャーキーでおやつにしよう、」


「ジャーキー、!」




なつかしい夢。そう思える程度にあの環境は過去になった

俺は
めぐまれた。


つらい日々を過去にできる、今のしあわせな日々を与えられた


与えてくれたのは人間
幸福も、喜びも、楽しさも、教えてくれたのは人間



痛いことをしたのも人間だけど

それでも
俺は人間をひとくくりで憎めなかった

冷たい、檻のまえで立ち止まって俺の前に膝をついて目を合わせて
あいつは言った



_ 『そこはお前が生きるにゃぁ、ちと狭いなぁ……
どうだい肉食動物。
俺と一緒に来るかい?』



あの言葉が、せいふの…えらい人間としての言葉だったとしても

救われたなら
あいつは俺の恩人だから



__ 『……良い言い方をすれば、お前にしかできないことだ
悪い言い方をすれば…お前を利用することになるんだがなぁ
…行ってくれるかい?』



きっと、俺にしかできないって言うだけでよかったはずなのに
利用すると言ったのは

俺に選ばせてくれるため

命令じゃなくて、聞いてくれたのは
俺が断ってもいいように



燭台切「……おいしい?」


「んぐんぐ…
んまぃ、あぐあぐ」



優しさを、知った
人間の。


…彼らにも

もう1度、この温もりを…

アニマルセラピー8日目→←アニマルセラピー6日目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す