6話 ページ6
「……すまない。」
それだけ言って、俺は逃げた。早くあの場から逃げ出したかった。かつてのチームメイトたちの罵声は耐えられたのに、弟からの否定の言葉は耐えられなかった。胸を抉るような痛みが走って、どうにかなりそうだった。俺はどうしようもないくらい弱かった。
途中で走り疲れて歩いていると、道の奥に、いないはずの存在を見つけた。
なんで、ここに？だって、帰ってくるのは明日だと言っていた。だから、いるはずはないのに。
「冴」
暗がりのせいで顔はよく見えなかったが、確かにそれは冴だった。この世で一番会いたくて、一番会いたくなかった人。
「……A、久しぶりだな。」
「あぁ、四年会えたなかったからな。帰ってくるのは明日だって聞いたが？」
「一日早めたんだ。まさかお前の帰りがこんなに遅いとは思わ……、」
明かりの灯る電灯の元まで歩み寄って、お互いの顔が見えた途端。冴の言葉が詰まった。顔にはありありの驚愕の色が浮かんでいる。しかし、それもすぐに溢れんばかりの怒りへと変わり人には見せられない顔で走り寄ってきた。
勢いよく肩を掴まれ、怒りと悔しさと悲しみでぐちゃぐちゃの顔でこっちを見てくる。
「誰が、お前をそんなふうにした。」
これだから、俺は冴に会いたくなかった。電話越しならまだごまかせた。でも、会えばバレると思っていた。マネージャーや凛にはごまかせたけど、やはり片割れに誤魔化しは効かないようだ。
「言えよ、A。お前、なんで、そんなっ……。」
俺のことなのに俺以上に悲痛な顔をするからなんとも言えない気持ちになる。なんでお前が泣きそうになってんだよ、冴。お前の方がよっぽど大変な思いしたんだろ。凛が言ってたあいつって、お前のことだろ。なぁ、そうだろ、冴。
「俺は、大丈夫だ、冴。全部俺が悪いんだ。気にする必要はない。」
だから、気にせずにお前は世界一のMFを目指せばいいんだ。
俺の心の声が聞こえたかどうかはわからないが、ますます歪んだ冴の顔を見て微笑む。綺麗な顔が台無しだ。だけど、それすらも綺麗だと思えてしまうんだから、本当に腹が立つ。
「っ、ふざけんなよ、お前をそんなふうにしておいて俺が許すと思うか。答えろよ、A。頼むから……っ！」
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鷹央(プロフ) - pixivでも掲載しています。ややこしいことをしてしまってすみません (2023年3月15日 21時) (
レス) id: 4cc9baeca7 (このIDを非表示/違反報告)
サイラ(プロフ) - 失礼ですが，pixivでも活動していらっしゃるんですか？ (2023年3月11日 0時) (レス) @page2 id: 25e3ef7092 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵なお話で読んでて胸が締め付けられました……！！続きが気になって仕方ありません。これからも応援しております！体調にお気を付けて更新頑張って下さい！！素敵な作品をありがとうございます！ (2023年3月5日 20時) (レス) @page13 id: 31d680217c (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - めっちゃ最高でした！！糸師兄弟がとても好きなので、嬉しかったです！無理しない程度に頑張って下さい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年3月5日 3時) (レス) @page7 id: 4aa49d82fe (このIDを非表示/違反報告)
鷹央(プロフ) - わざわざ教えてくださってありがとうございます！ (2023年3月4日 22時) (レス) id: 4cc9baeca7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茨姫 | 作成日時：2023年3月3日 23時
