11話 ページ11
本来の予定では、Aは俺より1日早くついているはずなのでどこかで会えるはずだ。そう思って探していると、道の奥に見慣れた姿を見かけた。
「冴」
俺の名を呼ぶ声色は、かつてのAを思い出させた。4年ぶりの再会に、いろいろな感情がごちゃ混ぜになって俺の胸を満たしていく。
「……Aか。久しぶりだな。」
「あぁ、四年会えなかったからな。帰ってくるのは明日だって聞いたが?」
「一日早めたんだ。まさかお前の帰りがこんなに遅いとは思わ……、」
そこまで言って、言葉が途切れた。今まで暗がりで見えなかったAの顔が、電灯の明かり照らされる。
なんだ、それは。
変わり果てた片割れの姿に後悔と怒りと悲しみと。溢れんばかりの感情が胸に広がる。
思わずAの元まで駆け寄って、離さんと言わんばかりに強く肩を掴んだ。
「誰が、そんなふうにした。」
4年ぶりにあったAは、見るからに痩せていて、その身では抱えきれないほどの傷を負っていた。
「言えよ、A。お前、なんで、そんなっ……。」
言葉が続かなかった。
Aが抱える傷はあまりにも大きかった。糸師Aという人間を壊すには、十分すぎるほどの大きさだったのだ。
なのに。
なんでお前はそんな風に笑うんだ。
「俺は大丈夫だ、冴。全部俺が悪いんだ。気にする必要はない。」
だから、気にせずお前は世界一のMFを目指せばいいんだ。
そんな声が聞こえた気がした。
その瞬間頭の中でブツリと何かが切れる音がした。
お前はどこまで俺たちのことを考えれば気が済むんだ。なんで自分のことを守らない。なんで自分を救おうとしない。なんで助けを求めないっ………!
「っ、ふざけんなよ。お前をそんなふうにしておいて俺が許すと思うか。答えろよ、A。頼むから……っ!」
耐えられなかった。これ以上こいつが傷ついているのを見るのは。自分が傷つく以上に、身を引き裂かれるような辛さがあった。
それと同時に、片割れをこんなふうにしたヤツらが許せなかった。
俺の唯一無二の存在。何にも変えられない、大切な存在。そんな宝物とも言える存在を、傷つけられた。腸が煮えくり返る思いだった。
だけど、どこまで行ってもこいつは糸師Aだった。
564人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鷹央(プロフ) - pixivでも掲載しています。ややこしいことをしてしまってすみません (2023年3月15日 21時) (レス) id: 4cc9baeca7 (このIDを非表示/違反報告)
サイラ(プロフ) - 失礼ですが,pixivでも活動していらっしゃるんですか? (2023年3月11日 0時) (レス) @page2 id: 25e3ef7092 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵なお話で読んでて胸が締め付けられました……!!続きが気になって仕方ありません。これからも応援しております!体調にお気を付けて更新頑張って下さい!!素敵な作品をありがとうございます! (2023年3月5日 20時) (レス) @page13 id: 31d680217c (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - めっちゃ最高でした!!糸師兄弟がとても好きなので、嬉しかったです!無理しない程度に頑張って下さい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年3月5日 3時) (レス) @page7 id: 4aa49d82fe (このIDを非表示/違反報告)
鷹央(プロフ) - わざわざ教えてくださってありがとうございます! (2023年3月4日 22時) (レス) id: 4cc9baeca7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:茨姫 | 作成日時:2023年3月3日 23時