東風を呼ぶ ページ21
カムバックショーケースが行われる前日、作業室にいるウジを差し入れを持って訪ねた。
「ヒョンがわざわざ来るなんてなんかあんの？」
1発でバレた。
今まで何度だって話し出すのに勇気が必要だったこともっとあっただろ いけチェスンチョル
自分で自分を鼓舞した。
「…モナが隠してたこと。怒ってる？」
「なんで？ヒョンは怒ってんの？」
無表情のまま回転椅子ごとこっちを向くウジ。感情が読めなくて、ただその眼を見つめた。
「いや、怒ってないよ全然。あの子はそういうとこあるし。ただ、びっくりさせたくてだけじゃない気がして。」
「なんとなく」と続けるとウジは少し黙って、両手の指先を合わせて親指からクルクルと回した。
「アイツさ、昔から自分の役割、立ち位置に関して凄くシビアじゃん」
そう言われて昔からの彼女を思い出した。
女である自分に悩み、どうしたらメンバーに迷惑をかけないかどうしたら最小限に批判を抑えられるかそんなことばかりを考えていた最初の頃。
「どう振る舞ったらグループに迷惑をかけないかの次は 何をしたらグループの役に立てるか、自分の意義を見出せるか。再契約の話し合いでも言ってたけど 自分がこのままSEVENTEENに居続ける必要性があるか。
それをずっとアイツは自分に問いかけてる」
小指まで辿り着いて回すの辞めて、腕を組んだ。視線の先はオレでは無く、部屋に置かれたベアブリック。確かモナが誕生日に贈ったものだ。
「だから多分、このユニット活動に関しては自分の力でやり遂げたいんだよ。
自主制作でやって来た以上どうやってもオレが全く関わらない曲を事務所がオッケーすることはないじゃん。それはオレも分かってるしアイツも分かってる。」
それは確かに言う通り。ウジとボムジュヒョンが主体となって作るオレ達の曲はメンバーそれぞれ誰かが参加することはあってもその2人が全く関わらないことはまずない。
モナだけで作る曲がSEVENTEENの活動曲に選ばれることはきっとこれからも無いだろう。それは出来の良さ、悪さではなく自分達のブランディングと方向性に基づいた結果だ。
「アイツが自分を認められるようになる為に、今回の活動はアイツ自身がやり遂げる必要があるんだよ。少しずつでも自分がここにいていいって他人じゃなくて自分が認めてあげないと。」
だからオレは、今回はノータッチ。関わらないって決めてんの。
ともうぬるくなったであろうコーヒーを一口飲んで、息を吐いた。
「まあ初めて共作するのがオレじゃないところに関してはムカつくけど」
「オレはそれが気まずいから言ってこないんだと思ってたよ」
「それもあるとは思うけど、自分の壁を壊そうとしてんだよ。見守るしかないでしょ」
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作者名：RIN
| 作成日時：2022年10月1日 0時
