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「大変だった？」
『何が？』
あまりこの家では使われないオーブンに彼がいくつもパンを入れていく。何個買ったんだ私たち2人しかいないのに。
「曲、作るの。」
『…そうだね。何回もやったことはあるけど締切が無かったからその時は。』
「オレが言うのもあれだけど良い曲だったよ。」
『本当？ボボにそう言ってもらえるのは光栄だね。』
「歌詞が、良かった。」
シューと煙を出しながら、マグカップに少しずつ、コーヒーが抽出されていく。
『歌詞で思い出したけど、あれってどういうつもりだったの？』
「あれって？」
パンが焼けた音、コーヒーの匂い。
湯気が立ったマグカップを２つ持ってソファの前に置かれたテーブルに置いた。
アイランドキッチンになっているカウンターでトングでパンをお皿に移している彼は私に背を向けている。
『Ready to love』
ギクッという音が聞こえるような動きの止まり方だった。
そんなことある？いくらアニメが好きだからって。
「…いや、あれは、オレだけが考えたんじゃないし、別に深い意味は」
『無いの？』
「無いことないけど」
『無いんかい』
「この歌詞書いて…あわよくばバレても良いやって思ったんだよ」
『………』
トング片手にオーブンの方を向いたままの彼の元まで行くと、髪から出る右耳は真っ赤。
『やだ，この子可愛い！』
「絶対言うと思ったわ 良いから持ってけこれ！」
押しつけられたお皿に乗ったパンはどれも私が好きなものばかりで思わず笑みが溢れた。
『さーてバレバレのジフンさんが買ってきてくれたパンでも食べますか！』
「ふざけたこと言うのはこの口か？」
『ブッ…』
両頬を手で潰されたところで
ガチャ。…………え、ガチャ？
『「え」』
「あれ………お前らいたの？」
頭ボサボサでTシャツの裾からお腹を掻く剛田…………ユンジョンハン。
「ヒョン、いたの」
「寝てたけどさっき起きた。」
押さえられたままの頬と私の間抜け顔とジフンを両方見て「お前ら、何かあったの？」と眠気まなこで。
『予想通りの発言』
「オレも絶対こう言われると思ってた」
顔を見合わせて笑うとオッパは不審そうにして冷蔵庫から水を出した。
「ま、いっか幸せそうなら」
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作者名：RIN
| 作成日時：2022年6月12日 8時
