Adagio2【プリンシパル番外編 SVT】 (ページ29)

今日:15 hit、昨日:29 hit、合計:80,103 hit

9 ページ29

「私は、あのまま声楽を続けて日本かヨーロッパに留学して…っていう未来もあったけどこっちの選択肢を選んで良かったと思ってる。そうじゃなきゃこんな一気に大事な家族ができることも無かったし、舞台に立って踊る楽しさを知ることも無かった。」

『そう、だね』

「私は少なくとももう少し、皆で色々な景色が見たいと思ってるよ。SEVENTEENだから出来ることがある。」

オンニがここまで連れてきてくれたんだよ私を。

『私今説得されてる？』

「どうでしょう。」なんてニッコリ笑うこの子を見たら。

叶わないなあ。妹にそんなこと言われちゃったら。自分の人生なのに意外とチョロいんだから私。

「なんかこうして夜中に外でって、あの時みたいじゃないですか？漂流記」

『うわ…懐かしい』

あの時は、私が持ってきたインスタントコーヒーを飲みながら夜中に2人でこれからを話して、その後話を聞いてたホシウジとも話したんだ。

「あの時、おやすみーって部屋に戻ったらバーノンが起きててね、こっちおいでって一緒に寝たんだよね。」

『そう、私も結局ホシウジと一緒に寝て。あの時とはまた、変わったね。色々』

「…変わった。周りの環境もそうだし、人もそう。自分もそう。」

雲の間から出た月が私達を照らして、水面がゆらゆら揺れる。

19歳が26歳になればそりゃ変わる。

あの時は、ハルを支えなきゃ助けてあげなきゃ、守ってあげなきゃそう思っていたけど

もう今となっては私が何かをしなくても、充分1人でやっていけるくらいになった。

「オンニ」

『うん』

「ワガママ言ってもいい？」

『うんもちろん。』

「もう私のことを守るとか、助けたいとか思わないで。ただ、隣で一緒に舞台に立ちたいし、紅一点になりたくない。2人でこれからもここにいたい。これからは…オンニを私が守っていきたいの。」

隣を見ると、日本から来て人の顔色を伺いながら恐る恐る韓国語を使う女の子はもうそこにはいなかった。

『大きくなったねえ…』

「オンニ、完全にオンマになってるから。」

『私今日だけで3回くらい言われてんのよそれ。』

ドギョム見送らなきゃだから、そろそろ寝ようか、と2人でまた部屋に戻った。

明日からまたいつも通りの日々に戻る。
練習して、テレビに出て、取材を受けて、

そして自分の未来と向き合う日々を。