俺が助けたんねん【宮侑】 (ページ32)

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30話やでページ32

side侑

侑「･･･北さん。」

俺をギリギリのところで止めたのは、北さんの声やった。

北「落ち着き、お前が今一番にやらなあかんことはなんや？そいつを殴り飛ばすことか？ちゃうやろ？それでお前が怪我でもしてみぃ、その子が悲しむんとちゃうか？」

侑「あ、北さん、俺･･･。」

北「もうすぐ治達が先生を連れてくる。ここは俺がどうにかしたるから、お前ははよその子を保健室に運んだり。」

侑「あ、ありがとうございます！」

俺は北さんにお礼を言うと、Aちゃんを抱えて保健室まで急いだ。たぶん脳震盪やから、極力振動を与えないように。保健室に着くと、すぐに先生が見てくれてAちゃんは今ベッドで眠っている。すでに昼休みは終わっとるけど、俺はここから動く気はなかった。それから、5限が終わって6限の真ん中くらい。Aちゃんが、目を覚ました。

『み、や、くん？』

侑「！Aちゃん目ぇ覚めた！？大丈夫か？クラクラしたりせん？頭痛いとかない？」

『ん、まだちょっとぼんやりする。』

侑「ちょい待っとってな。すぐ先生呼んでくるわ。」

俺がベッドの側を離れようとすると、弱い力で手を引かれた。

侑「Aちゃん？」

『宮君、怪我してない？』

へ･･･

『宮君の、バレーをするための、大事な手、怪我してない？私、ちゃんと守れた？』

侑「そのために、前に出たん？」

『私ね、バレー部の練習を、見せてもらって、バレーのこと、勉強したの。その時に、宮君達が、すごい人だって知って、でも、それよりも、宮君が、本当にバレーのことが大好きだってことがわかって。それを考えたら、体が勝手に動いちゃった。弱いくせに、しゃしゃってごめんね。』

その言葉を聞いた瞬間、俺はAちゃんのことを思い切り抱きしめとった。目からは、涙が止まらんかった。

侑「･･･ありがとぉ。俺、Aちゃんのおかげで怪我してへんよ。守れんくてごめんな。怪我さしてまって、ほんまにごめん。怖かったよな。怖いのに、俺のためにありがとぉ。」

なにを言っているのか自分でもわからんかった。でも伝えたかった。ごめんとそれを上回るありがとうを。

『私、あの人に会ってる時、ずっと宮君のこと考えてたの。それで、殴られそうになった時、心の中でたくさん助けてって言ったの。宮君が言っていいて言ってくれたから。そしたら、本当に宮君が来てくれた。宮君、ありがとう。助けてくれて、守ってくれて、本当にありがとう。』