君のことが知りたい ページ48
「じゃあ今日はこれで解散!また明日!」
担当の先生がそう言うと、文化部の生徒はバラバラと散らばっていった。
「海斗、帰ろう」
「ああ、そうだな」
ショージに声をかけられて、俺ー進藤海斗ーは、荷物を持って校舎を後にした。
「じゃあねー」
「明日遅刻すんなよ」
「分かってるって」
校門で、そう言葉を交わしてからショージと凉馬と別れた。
「行こうか」
真帆が俺の半歩前で待っている。今日、真帆は自転車で来たから、自転車を押して俺と帰ることになった。
「おう」
一言返事をしてから、歩き出す。夕日はもうほとんど沈み、薄暗くなってきている。さっさと帰ろう。
と思ったけど。
「ねえ海斗、変なお願いしていい?」
歩きながら唐突に質問された。
「え?いいけど」
真帆はにやりと笑ってから言った。何だよ変なお願いって。
「海斗のさ、小さい頃の話聞きたい」
「え?」
予想外の回答に一瞬ポカンとしてしまった。
「小さい頃?」
「うん、凉馬と何してたかとか、何が好きだったかとか」
「えー…凉馬とは…あ、あれかな」
「何?」
「俺も凉馬も、見えない敵と戦ってたんだ」
「見えない敵?」
「そう。ヒーローものとか、やっぱ好きだったんだよな」
「へー、意外」
「真帆は?どんなだったの?」
「私?うーん、あんまり遊ばせてもらえなかったかな、小さい頃は」
「何で?」
「お母さんが服とかすごいこだわってて、汚すからやめなさい、とか。あとは勉強とかしてた」
「え?その時いくつだよ」
「幼稚園。まあ、英才教育したかったんだろうね」
「ああ、真帆お嬢だもんな」
「いやいや、これは親の見栄」
そんな話をしているうちに、真帆のことをもっとちゃんと知りたいと思った。どんな話をしようか考えていたら、真帆が足を止めて
「あ、私の家ここだから」
と言った。
「そうか、じゃあまた明日」
「うん、バイバイ」
別れの挨拶をして、真帆は大きな洋館へ消えていった。
明日はもっと話をしよう、と真帆の背中に心の中で言ってから俺も家に向かった。
君のことが知りたい。
もっと、ちゃんと。
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時