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ステージ・2 ページ46

吹奏楽部のステージは、ものすごい人混みの中にある。このへんでは強豪と呼ばれる渚学園吹奏楽部の演奏を一目見ようと、多くの人が集まっている。そんな中、僕ー伊達凉馬ーは、ショージと青葉と最前列でステージを見ていた。

「…世界的にも有名なジャズです。テナーサックスのソロにも注目です。それではどうぞ!」
テナーサックスのソロ、と聞いて僕は何となく誇らしさを感じた。ソロを吹くのは僕の親友なんだ。そう言って回りたかった。海斗は嫌がるだろうからやらないけど。
この曲はジャズなだけあって、サックス、トランペット、トロンボーンがすごく忙しそうだ。その忙しそうなトロンボーンパートの中には、ショージのお兄さんもいる。音がよく通るから一発で分かる。さすが留学してただけあるなー、と考えていたら、海斗のソロが始まった。

速い連符も完璧に決めた。急な跳躍も決めた。非の打ち所がない。
そして、ちょっとダークな音色が魅力的だ。惹きつけられるような演奏、とはこのことだ。

ソロが終わり、海斗は一礼した。僕は最高!と伝えるために大きな拍手を送った。海斗が席につく時、ちょっと目が合って、海斗は満面の笑みを僕に向けてきた。えくぼまではっきり見えた。


「海斗、お疲れさま!」
午後3時、海斗は楽器ケースを背負って戻ってきた。ちょっと疲れてるけど楽しかった、みたいな笑顔。表情筋が程よく省エネしてる。
「ここ、ステージ終わったのに人多いな」
今いる広場は、門を入ってすぐだからか、確かに人通りが多い。ちなみに青葉とショージは「海斗と2人で休憩してて」と言って僕を海斗のところへ行かせ、文芸同好会のコーナーの留守番をしている。
「ソロ、聞いててどうだった?」
「マジですごかった。鳥肌立った。何て言うか…とにかく、よかった、すごく」
「文芸同好会とは思えない語彙力だな…でもありがと」
「いーえ」
語彙力がないんじゃなくて、言葉も出なくなるくらいすごかった、と言おうとしたら、風に吹かれて揺れる木の葉のガサガサという音に遮られた。まあいいや。
「そうだ、凉馬、暇?」
「え?まあ暇だけど」
「何か見に行こうよ」
「いいよ、どこ行く?」
「漫研」
「おお、行こう行こう」
「凉馬、これ、いつしか振りのデートみたいだな」
「え?」
意味不明なその台詞は、ニカッと笑ってごまかされてしまった。
でも今は気にしないでおこう。海斗と一緒にいられる時間を存分に楽しむために。
「行くぞー」
「はいはい」
楽器を背負ったままの海斗の、いつもより大きく見える背中を追いかけて部室棟の方へ2人で向かった。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時

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