前日 凉馬編 ページ36
「海斗、頑張れよ」
「おう」
Z020年11月第4金曜日、午後3時30分。文化祭前日。僕ー伊達凉馬ーは、渚学園吹奏楽部に合流した海斗を音楽室へ案内している所だ。文化祭のステージで海斗は、なんとソロを任されたそうだ。喜んで毎日(籠りっきりで)練習していた。僕のところにも練習動画が何度か送られてきた。
「じゃあ僕はここで。あとは吹奏楽部の人の指示に従って」
「じゃあな」
「頑張ってな」
音楽室の中へ入っていく海斗の背中は、背負っているテナーサックスのケースのせいか、大きく見えた。
「青葉、荷物持ってこうか?」
続いて、青葉と荷物の運搬作業。文化祭に参加する部の荷物を星が丘まで運ぶのだ。
「じゃあ、この段ボールお願い」
「オッケー」
ずしりという感触。中身は文芸同好会の書籍だ。おすすめの本を紹介するので、青葉と2人で厳選した。
「バス出てるみたいだから、それ乗ろう」
という青葉の提案で、学校から徒歩2分の所にあるバス停に行き、バスに乗った。
「電車より近いかもね、バスの方が」
僕たちは、星が丘の目の前でバスを降りた。電車だと駅から5分歩くが、バスは学校の門の前にバス停があるため、バスで行く方が便利だ。
「あ、ショージ」
玄関前で僕たちを待っていてくれたらしい。鼻と指先が真っ赤だ。
「よく来たな」
「寒いね、今日。ずっと待ってたの?」
「いや、5分ぐらいだよ」
ホントかよ、と言いながら校舎へ入った。校舎は白を基調としたシンプルな壁や床で、清潔で明るい印象がある。
「文芸同好会はここ、海洋学部はその隣」
2年生の隣合った教室に案内され、僕はB組、青葉はC組で、それぞれ荷物を降ろした。僕が持っていたのは本。すごく肩が疲れた。
教室の机をコの字に並べ、その上に持ってきた本を並べていく。さらにその本の魅力をびっしり書いたポップを置いて完成。立派な文芸同好会のブースに早変わりだ。
「青葉、そっちはOK?」
「うん、今終わったとこ」
「じゃあ、もう退散しよう。まだ仕事が残ってるから」
「うん」
僕たちは、ショージにひと声かけてから急いで渚学園に戻るバスに乗った。
学校に戻り、1時間ほど作業をして解散。その後、青葉と一緒に駅まで歩いた。
「凉馬、明日頑張ろうね」
「ああ」
改札を通る前に、グータッチをして別れた。すごくいい気分で、幸せを噛みしめたくて別れた後もゆっくり歩いていたら、電車を1本逃した。
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時