僕らの世界 (ページ27)

今日:13 hit、昨日:15 hit、合計:13,531 hit

家族会議・2 ページ27

「俺、今度の文化祭で楽器辞めようと思う」
「はあ？！」
家族団欒の場で、翔はとんでもない話を持ち出した。
「ちょっと、いきなり何を言うの！帰ってきたと思ったら！」
まあ母が怒るのも無理はない。楽器を買ってやり、留学までさせた。けど、それをチャラにしようなんて言ったら、ものすごい大損だ。
「プロ目指してたけど、ドイツ行ってきたらやっぱり…レベルが違いすぎて追い付けなかった」
「…」
「だから、最後の本番は完璧にしようと思って学校行かないで練習してたんだ」
「…」
「本当に、ごめんなさい、…親不孝で」
翔の目には、涙が浮かんでいた。母の肩が震えていた。父は無表情で、微動だにしない。
「いいんじゃないか…」
沈黙を破ったのは、父だった。
「翔が望むなら、いいだろう」
俺はこんなことを言う父を初めて見た。いつも無口で、こういう話には一切介入しない父が、口を開いた。
「父さん、母さん、ごめんなさい…ありがとう」
母も納得したのか、頷く。
「じゃあ翔、今度の本番は絶対成功させてね、俺、見てるから」
「おう、わかったわかった」

一時はどうなることかと思った家族会議は、無事に円満解決。来週末の本番に向け、家族でも団結して準備を進められそうだ。