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海の家 ページ21

「ただいまー」
靴だらけの玄関から家に上がると、弟たちが駆け寄ってきた。
「おかえりー!」
「ただいまー」
僕ー瀬戸航平ーは、5歳の弟、湊を抱き上げる。

リビングに入ると、双子の妹である美咲がゲームをしている。
「美咲、テスト勉強しなくていいのか」
「間に合ってまーす」
美咲と僕は、一卵性双生児だ。小さい頃からよく似ていたが、性格は真逆。僕はわりと何でも真面目にやる方。けど美咲は大雑把。成績は中の下だが、真面目にやればもっとよくなるのではないかと僕は思う。
「痛ー!何か落ちてきた!」
今のは、小学1年生の弟、明洋。明洋が座っているソファの横には、今にも破裂しそうな本棚があり、その中の本が数冊落ちていた。
「あー、コレか。片付けなきゃな」
我が家はとにかくモノが多い。なぜならうちは大家族だからだ。5男2女、さらにあと5か月ほどでもう1人妹が生まれる予定だ。
「兄ちゃん、本いっぱい置いてったからね」
ちなみに今の「兄ちゃん」とは、うちの一番上の兄、太一のことだ。今年の春、大学に通うために家を出ていき、現在は大阪に住んでいる。
我が家は、両親、太一(兄)、僕、美咲(妹)、凪沙(妹)、海成(弟)、明洋(弟)、湊(弟)という家族構成だ。兄の太一は「沢山勉強していい所に就職する」と言って大学に進学した。
…と思ったら、即退学。つまり高卒。今は東大阪市の工場で働いている。長男だが、とにかく自由人なのだ。
そして自由人なのは兄だけではない。妹、弟、親、全員が自由人。僕はそのフォローやら後片付けやら、何かと苦労している。フリーダムファミリーの次男はこれ以上ないぐらいブラック。
「航平、夕飯できたよ」
母がダイニングから僕を呼ぶ。今日の夕飯はカレー。

これは、危険だ。

「いただきまーす!」
「あ、海成抜け駆けしたー!」
「明洋、こぼしてる」
「おかわりー!」
「ずるい!私の分残しといて!」
「ずるくないもーん」
「美咲、ニンジン食べろ」
「えー、やだ」
「兄ちゃんの分も食べちゃうぞー」
「凪沙の方が肉多いー」
「大して変わらないよ」

夕飯の時の我が家は、カオス。危険地帯。近付かないほうがいい。好き嫌い、おかわり、人の分まで平らげる、肉の多さで喧嘩する、我が家の食卓は食料を巡る戦争状態だ。大抵僕が弟や妹をなだめているうちにおかずはなくなり、僕は滅多におかわりできない。


ここまで瀬戸家を紹介したが、カオスなのがお分かりいただけただろうか。僕はこの混沌とした家の中で、何があっても常識人でなくてはならない。大家族の次男は、苦労が絶えない。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時

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