話をきかせてよ ページ3
Z020年8月某日。今日も暑い。
俺ー東海林隼ーは、この時期になると思い出す人物がいる。
青葉真帆。6年の時、ジュニアキャンプで同じ班だった。
ジュニアキャンプとは、俺の住む中原市が主催する小学校5・6年生を対象としたキャンプだ。1泊2日のキャンプで、登山やカレー作り、レクリエーションを行う。
一緒の班で登山をしている時、俺は木の枝で腕をひっかき、傷ができてしまった。すると青葉はすぐにリュックから消毒液を出し、俺に渡してくれた。班の中の保健係なのでまあ当然のことをしただけだが、俺は青葉をいい奴だと思った。
カレー作りでも、率先して材料を切ったり火加減を調節したりと、大活躍だった。
キャンプが終了して解散した後、「ありがとう、楽しかった」と言って笑顔で手を振ってくれた。
俺は青葉のことをいい奴と認識し、尊敬した。と同時に、恋だか友情だかよく分からない感情が湧いてきた。けど、とにかくプラスの感情を抱いたことは確かだ。
その後、通っているサッカーチームの友人から聞いた。青葉は学校でいじめられていた。そして9月頃に転校した。
青葉の家はかなり裕福らしく、「お嬢様は庶民とは仲良くしないでしょ」という勝手な見解のもと、無視されたり物を取られたりしていたらしい。
俺はその話を聞いて、もう一度青葉に会って話をしたいと思った。しかし2年弱が経った今も青葉に関する情報は掴めていない。今はただ、再会を願って待つことしかできない。
話をきかせてよ。
この声も、きっと届かない。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時