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brother ページ19

「島田先生は、俺の兄貴の部活で顧問やってたんだよ」
『えぇ〜?!』
俺ー東海林隼ーは、真帆と凉馬にビデオ通話越しに驚かれ、自分もつい驚いてしまった。
『てかショージ、お兄さんいたの?』
「うん、3つ上にいる。『飛翔』の『翔』で『かける』っていうんだ」
『へー、部活は何やってたの?』
「渚学園の吹奏楽部。トロンボーン吹いてた」
『え、星が丘じゃないの?』
「そ、吹奏楽部は渚学園の方がいいって言ってたから」
兄貴は、とにかく吹奏楽に熱心だった。練習は朝1番に行って、夜も1番最後まで練習していたらしい。家には寝に帰っていたようなものだ。
『じゃあ今も高等部にいるってこと?』
「いや、いない」
『え?なんで??』
「兄貴、ドイツに留学してるんだよ、もうすぐ帰ってくるけど」
『ド、ドイツ?!すごい!』
「まあ、留学には色々と訳があって」
『え、何それ』
俺は少し間をおいて言った。
「こっちで、文化部ヘイトに遭ってたから」
『文化部ヘイト…それって、文化部軽視とか、差別とか…そういうこと?』
真帆が訊いてきた。
「そんな感じ。軽いいじめみたいなのに遭って、もうこっちでは吹奏楽やりたくないって言って、去年ドイツに音楽留学したんだ。『うるさい運動部から離れて楽器が吹けるならもう何だっていい』とか言ってさ」
ー文化部ヘイトを受けずに吹奏楽を続けられるなら、行ったもん勝ちだろ。
1年前、そう言った時の兄貴の目を思い出す。もう迷いがない、まっすぐな目だった。
『所で、何で島田先生は吹奏楽部の部員の弟のことまで知ってるの?』
「たぶん、兄貴がさんざん話してたんだよ、俺のこと。結構仲良かったから」
『なるほど』
ーあ。
俺、今、ひとつ閃いた。
「ねえ、今思いついたんだけどさ、兄貴が帰ってきたら、文化祭で渚学園吹奏楽部と共演ってのはどうかな」
『あ、いいね!僕たちで島田先生に提案してみようかな』
「そうしてー。俺は兄貴に交渉するから」
『うん、じゃあよろしくね』
「わかった、んじゃ今日はここらで」
『じゃあね』
「うん」

兄上様、朗報です。帰国して1番の舞台が決定しそうです。島田先生はきっと喜んで受け入れてくださることでしょう。

この日、兄貴の帰国まであと2週間だった。再来週がすごく待ち通しい。こういうの、「一日千秋」っていうんだっけ。

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設定タグ:学園 , 友情 , 青春   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時

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