僕らの世界3 (ページ36)

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切磋琢磨・2 ページ36

「頑張って」

凉馬がウインクをすると、そう言っているように思えた。言葉を交わすことなく気持ちが通じるくらい仲良くなったんだな、と感じる。
私ー青葉真帆ーの出番まで、あと少し。手を固く握り、緊張からくる震えを堪えていた。
その時。

「みなさん、こんちには！この度生徒会に立候補させていただいた、1年A組の瀬戸航平です！」

雷みたいにはっきりしていて大きな声。明瞭快活でお馴染みの、海洋学部部長・瀬戸航平くんが元気な挨拶をして演説を始めた。大きな声に、ボーッとしていた私はちょっとビックリした。
「僕は、1年生で、文化部です。本当なら、運動部で2年生の方が生徒会に入るのが普通でしょう。しかし、僕はその常識を覆すべく、ここへ来ました」
瀬戸くんの目はどこまでもまっすぐで、澄んでいた。目に映る全てのものが、鮮明に見えていそうな目。目標に向かって、一心不乱に突き進んでいるみたい。
「僕が生徒会に入った暁には、下級生や文化部に優しく、誰もが平等に楽しめる学校を目指していきます！」
どんな人でもよく聞こえるような、はっきりした喋り方。聞いていて清々しい気分になる。瀬戸くんの最大の武器は、第一印象のよさ。これは、断言できると思う。
「清き一票、よろしくお願いします！ご清聴ありがとうございました！」
瀬戸くんがガバッ、と礼をすると、炭酸水を飲んだみたいな爽快感が駆け巡る。「清聴」という部分が、「清澄」と変換されるような爽やかさ。

でも、その余韻に浸るほどの余裕はなかった。次は、私の番だ。
すっと立ち上がり、ステージへと続く階段を上る。一段ずつ、堂々と。
ステージの真ん中に立って、深呼吸を一回。

よし、大丈夫。