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特急(帰り) ページ31

午後4時40分。今は、特急のボックス席に4人で座り、私ー青葉真帆ーたちの住む町へ帰るところ。
夕方の暖かい日射しと、特急の揺れでだんだん眠くなってくる。向かいに座っている凉馬があくびをすると、私もつられてあくびが出る。
「真帆、眠い?」
隣の席のショージが尋ねてくる。大丈夫、と答えたけど、
「あと30分くらいで着くから、それまで寝ててもいいけど」
と返してきた。まあ、結局寝なかったけどね。
ガタン、と車両が揺れる。たらふく食べて散々走って今は爆睡している海斗の頭が隣にいる凉馬の肩にぶつかった。本来なら「ポッ…」っていうシチュエーションだけど、
「痛っ…」
凉馬は顔をしかめた。これぞ、恋愛に興味ないBLUE LEMON。海斗の頭を向こうに押してから、肩をさする。
「こいつ、小さい頃から寝汚くてさ」
当の海斗は、起きる気配なし。人に頭突きしたなんていざ知らず、微かな寝息を立てて熟睡中だ。
「食って走って寝て、本能のまま動いてるみたいだな、海斗は」
ショージが笑いながら言う。
「だね」
雰囲気が、ちょっとホッコリした。車窓からは、午前中に訪れた鶴島の街が流れていっている。冬の終わりの太陽が、旅で疲れた私たちを優しく照らしていた。


「次は、南中原、南中原」
疲れて少しボーッとしていたみたい。アナウンスではっと我に返ると、ショージが私の顔を覗き込んでいた。私は動揺して、思わず
「…何?」
と訊いた。でもショージは、
「いや、何でもない」
としか答えない。
「え、何?」
「や、何も」
「本当に何?」
「知らない方がいいことだってあるだろ」
「ねえ、教えてよ」
「それより、海斗起こすぞ」
中途半端にごまかされた。ケチ、と毒づいてから、海斗を起こしにかかった。
「海斗ー、もうすぐ着くよ」
「起きろー」
海斗の肩をたたいてみたり揺すってみたり、色々やったけど中々起きない。

「まもなく、南中原、南中原」
アナウンスが流れる。すると海斗は、突然起きて目をカッと開いた。
「うわっ」
驚きのあまり声が裏返る。
「海斗、次で降りるから準備して」
「何で起こしてくれなかったの」
「何で起こしても一発で起きないんだよ!」
凉馬のツッコミと同時に電車が止まる。


「じゃあね」
「また月曜に」
駅で写真を撮った後、そのまま解散。ショージは駅の外、凉馬は私と反対方向の電車へと散っていった。

「私たちも、帰ろっか」

帰るまでが旅→←青春したいじゃん



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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年2月2日 21時

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