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望み ページ13

「ところで海斗くんはさ…」
翔先輩は、一段落した所でため息混じりに言った。
「生徒会じゃなくてBLUE LEMONで、何をしたい?」
俺ー進藤海斗ーは、その質問の意味が理解できなかった。それで、先輩の薄い茶色の目が閉じたり開いたりするのをただ見ていた。ショージも薄い色の目だけど、それより薄い色だ。
「…意味、分かる?」
俺は首を横に振った。
「海斗くんは、生徒会には立候補しないんだよね。でも、他の3人は生徒会に立候補する、BLUE LEMONに所属している。ひとりだけ立候補しないのは、何か意味はあるの?」
「…単純に、人前に立つのが苦手だから」
「他には?」
「いや、それだけです」
先輩は笑顔で聞いてくる。でも、取り調べ室の刑事みたいな雰囲気がある。俺と先輩の間にカツ丼があってもおかしくない。
「じゃあ、生徒会に立候補する3人と、何がしたい?」
先輩は、最初の質問を噛み砕いて訊き直してきた。俺は少し考えてから、
「学校を今よりよくしたり、文化部の部室棟を守ったりしたいです」
「なるほど…でもそれは、誰のため?何のため?」
「…?」
俺は考えた。でも、答えらしい答えが見つからなくて、ずっと先輩の目を見ていた。
「分からない?」
そんな俺を見かねて、先輩は尋ねた。俺は頷いた。
「そうか…じゃあそれは、他の誰かのため?自分のため?」
「…自分のため、だと思います」
「うーん…じゃあ、学校をよくするとか、部室棟を守るとか、そういうことをすると、自分のためになることはある?」
先輩はずっとニコニコしたままで、その笑顔の裏に何があるのかは分からなかった。
「学校が過ごしやすくなって、行きたいって思います。部室棟はBLUE LEMONの本部があるから、みんなで集まれるし」
「だから、自分のため。それは生徒会でもできるけど、人前には立ちたくない。それで海斗くんはBLUE LEMONにいるんだね?」
「そうです」
「要するに、他の3人と青春したいってこと?」
俺は要されてるようなされてないような、微妙な要約に戸惑った。でも、
「まあ、そうです」
と言っておいた。先輩は、なるほどね、と頷く。
「先輩、何でそんなことを訊くんですか?」
何となく気になったことを質問すると、先輩は笑顔を崩すことなく答えてくれた。
「何で生徒会立候補しないんだろうなって思ったのと、海斗くんが望んでいることを知りたかったからかな」
「俺が望んでいること?」
俺は首をかしげた。
「そう。だから応援させてよ、学校をよくすることと、部室棟を守ること」
俺は、
「もちろんです」
と、先輩に負けないくらいの笑顔で応えた。

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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年2月2日 21時

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