盗み聞きなんて ページ44
．
木「───お互い目指す先は同じ。戦友よ」
晴れやかな、憑き物の落ちたような声を聞いて、私は壁に預けていた身体を起こすとその場を後にした。
盗み聞きなんて悪いことだけれど、ちょっとだけ2人のその後が気になったらか覗いちゃった。
…ま、上手い方向へ進んだようで一安心。
医局に戻って世良くんたちの片付けを少し手伝ってやろうと考え、私は廊下を進んでいく。
人気のない白い道にはコツコツとヒールの音が反響するだけ。
白衣のポケットに手を突っ込んだタイミングでふと、角を曲がった先から足音と話し声のようなものが聞こえた。
高「どうして私に連絡を下さらなかったんですか」
………権の字、か…。
私は少しだけ道を戻って壁に隠れるように引っ込む。
権の字はベンチの前までやってくると立ち止まって話を続けた。
相手はおそらく、アイツ。
回り道になるけど別の道を通って戻ろう決めて踵を返すと、もと来た道を歩いていく。
今のは聞かなかった事にした方が良さそうだ。
……別に権の字が東城大を裏切ってるとかそんなこと思ってるわけじゃない。
だって敵陣に送り込まれたスパイの果たす役目としては連絡を取ることは正しい行動だからね。
でもやっぱ、何ていうか。
「そんなに帝華大がいいのかなぁ」
あんなところの何処がいいんだろ。
アイツの下にいて何がいいんだろ。
私にはわからない。
デメリットしか思いつかない。
思わずため息が出てきてしまった。
あーだめだめ、幸せが逃げちゃう。
嫌な思考を振り切るように頭を振って仮眠室へ入ろうとしたら、今度はヒソヒソ話をする二人の声が聞こえてきた。
私はまた思わず足を止める。
あーあ…今日は盗み聞きしてばっかりだな。
世「───写真？」
花「レントゲン写真です。心臓部に……ペアンが写ってました」
世「……え」
花「渡海先生は何であんな写真を───」
「二人とも」
それ以上勘ぐられては困るんだよね。
話を遮って声をかけると、二人はビクリと肩を大きく震わせて入り口にいる私を見た。
世「北見先生…」
「片付けは進んだの？速くしないと征司郎戻ってきちゃうよ」
花「あ、えっと、はい」
ニッコリと笑顔を浮かべる。
二人は互いに顔を見合わせてから、不安げに瞳を揺らしたままダンボールの中身を出し始めた。
ごめんね世良くん、美和ちゃん。
気になってるだろうけど、それは君たちが触れていい内容じゃないんだ。
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霜月(プロフ) - ゆんすずさん» コメントありがとうございます！応援して頂けて非常に嬉しく思います。これからも頑張りますので、宜しくお願いします！ (2018年12月17日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんすず(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いております！！更新大変ですが頑張ってください！！応援しています！ (2018年12月15日 1時) (レス) id: 67b7d75cd8 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - snake20xjapan04さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！頑張って更新しますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白い！です。これからも楽しみにしてます。 (2018年9月26日 17時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 白兎さん» ご報告ありがとうございます。私もその作品を拝見したのですがあまりに似ていて驚きました。でも、どう対処するかまだ検討中なので…。暫くは様子を見ようかと思っております。 (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年7月13日 23時
