1つお使い ページ29
深夜。
殆ど人の居なくなった医局。
当直の医師は仮眠を取っていて静かだ。
さっきまで眠っていたくせに何やら調べものをしている征司郎の隣で、コンビニで買ってきた軽食を食べながらカエサルについて色々とデータを見ていく。
元々カエサルはこの帝華大が研究していた代物。
何かあったときに役立つ情報が転がっている可能性は高い。
備えあればなんとやら、だ。
「日本人用と言うだけあって流石だな…」
渡「おい」
「はいはい何でございましょう？」
渡「ん」
白衣を引っ張られて仕方なく隣の征司郎が弄っているパソコンを覗けば何ともまあ面白いものが。
「もしかして自分が泥棒扱いされてるの知ってた？」
渡「木下に言われた」
「なるほど」
それでも態々調べるなんて珍しい。
泥棒扱いされるなんて今更じゃない？
既に悪魔なんだし。
渡「ちょっとこれ」
「やだ。猫ちゃんに頼んで。私忙しい」
チっと盛大に舌打ちして、征司郎はスマホを取り出すと直ぐに電話をかける。
渡「猫…1つお使い」
くあっと1つ大きく欠伸して身体を伸ばす。
もういいかな。
征司郎の電話が終わったら家に帰ろう。
明日も早いし。
「せーしろ、私帰る」
渡「ん」
電話を終えた征司郎は短く返事を返すと、煙草の箱を手に取って立ち上がる。
無言のまま一連の動きを見つつ白衣を脱いでロッカーから出してあった鞄に詰め込むと、鞄の中でカサリと音を立てたものに気がついた。
引っこ抜いて突き出す。
何も言わず受け取ると征司郎は中のものにサッと目を通してから私へ突き返した。
「時間、あんまり無いかもよ」
渡「んなことわかってる」
「私も十分に目は光らせておくけど、なるべく早く戻ってきてね」
突き返されたもの──"佐伯教授のカルテ"が入った茶色い封筒を鞄に閉まって、廊下へ出る。
そこに待ち構えたかのように有馬くんが立っていた。
有「どこ行くんですか」
「家に帰るの。明日から自分の仕事があるもの。いつまでもあの人にかけてる時間はない」
有「また…ここへは」
「もう戻らないって。何度言えばわかる？ここは私の居場所じゃないの」
言いたいことはそれだけ。
何も言わず待っていた征司郎の手を掴んで建物から外へ出る。
渡「随分な執着だな」
「嬉しくない」
渡「どうだか」
ニヒルな笑みを浮かべた征司郎に別れを告げて、私は帰路についた。
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霜月(プロフ) - ゆんすずさん» コメントありがとうございます！応援して頂けて非常に嬉しく思います。これからも頑張りますので、宜しくお願いします！ (2018年12月17日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんすず(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いております！！更新大変ですが頑張ってください！！応援しています！ (2018年12月15日 1時) (レス) id: 67b7d75cd8 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - snake20xjapan04さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！頑張って更新しますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白い！です。これからも楽しみにしてます。 (2018年9月26日 17時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 白兎さん» ご報告ありがとうございます。私もその作品を拝見したのですがあまりに似ていて驚きました。でも、どう対処するかまだ検討中なので…。暫くは様子を見ようかと思っております。 (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年7月13日 23時
