これを機に ページ25
一人掛けのソファに座っていたのは木下さん。
私は征司郎に腕を引かれるまま、恐らく彼の生活スペースになっているであろうソファに座った。
「ありがとうございます。木下さんは営業ですか？」
木「はい。帝華大にもお世話になってますから」
「大変ですね。お疲れ様です」
治験コーディネーターだもんね。
お仕事で帝華大に来ることもあるよね。
向けられた視線から、『貴方は何故此処に居るのか』と問い掛けられているのが分かる。
「私の事は気にしないで下さい。ちょっとした野暮用で偶々、此処に居ただけですから」
これ以上詮索して欲しくは無い。
情報網の広い木下さんのことだから、そのうち
私があの人の孫であることは直ぐにバレるだろうけど、それでも自分の口から言う気にはなれなかった。
木「てっきり私は北見先生まで引き抜かれてしまったのかと思いましたよ」
「まさか。どれだけお金を積まれようと此処に自ら来るなんてことありえませんよ」
あ、征司郎に睨まれた。
別に怖くもなんとも無いけど。
「怒んないでよ。別に征司郎が悪いって言ってる訳でもないんだし」
渡「どうだか」
すっかり不貞腐れて、不機嫌そうに肘掛けの方へ頭を預ける征司郎。
腕を組んでため息をつく。
木「それにしても…帝華大に移って大人しくしされているのかと思ったら。相変わらずの様ですね、渡海先生？」
渡「患者がいる。そいつを助ける。以上」
半分本当で半分嘘なくせに。
渡「何処に行こうと、俺のやることは変わらないんだよ」
ハッと。
何かに気がついたような。
そんな表情をした木下さんは素早く立ち上がると、私と征司郎に会釈をして医局を去った。
山本さんと再会して、再び自分の中に湧き上がった感情と向き合うためのヒントが何か得られているといいけれど。
渡「病人みてぇな顔してたな、あいつ」
「ちょっと、女性に対して失礼だよ。木下さんだって色々と葛藤してんだから」
渡「へぇ」
「あ、興味ないんでしょ。薄情なやつ」
渡「うるせえ」
今朝、権の字から届いたメールを思い出す。
そこには『山本さんから治験コーディネーターを木下さんに戻して欲しいという要求を受けた』
との内容が書いてあった。
これを機に、すれ違っているであろう本音が木下さんも山本さんも、互いに正しく伝わればいいんだけど。
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霜月(プロフ) - ゆんすずさん» コメントありがとうございます！応援して頂けて非常に嬉しく思います。これからも頑張りますので、宜しくお願いします！ (2018年12月17日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんすず(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いております！！更新大変ですが頑張ってください！！応援しています！ (2018年12月15日 1時) (レス) id: 67b7d75cd8 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - snake20xjapan04さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！頑張って更新しますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白い！です。これからも楽しみにしてます。 (2018年9月26日 17時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 白兎さん» ご報告ありがとうございます。私もその作品を拝見したのですがあまりに似ていて驚きました。でも、どう対処するかまだ検討中なので…。暫くは様子を見ようかと思っております。 (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年7月13日 23時
