会う度に ページ16
櫻「さぁ、こちらに寄りなさい。もっと顔をよく見せてくれ」
一歩、また一歩。
ゆっくりと近づいていく。
デスクから二歩程間を空けた位置で止まった。
しわしわの手が伸びてくる。
頬に、触れた。
櫻「あぁ…やっぱりAちゃんは美人だね。由紀子にそっくりだ」
……また、それか。
この人は昔から口癖のように言っている。
自分の愛娘にして私の母である"櫻庭由紀子"に私がそっくりだと。
幼い頃は嬉しかった。
美人で、家事も仕事も何でも出来る母さんに似てるなんて。
私には勿体無いとすら思っていた。
でも。
母さんは、もう。
櫻「海外はどうだった？最先端の医療機器は素晴らしかっただろう？」
これも会う度に言われてる。
私は最先端の医療機器になんて興味ない。
医療に必要なのは、人の手だ。技術だ。
櫻「論文はどうしているんだ？しっかり書いているのか？」
これも。
他に話題ないのかな。
会ったって同じ話ばっかりじゃん。
櫻「Aちゃんが書く論文は素晴らしいから。きっとすぐに出世できるぞ。父親と違ってな」
パシン。
乾いた音がだだっ広い室内に響く。
気がついたら、頬にあった手を払い除けていた。
目の前の男は大きく目を見開いている。
「父さんのことを悪く言うのはやめてください」
父さんを殺したお前に、悪く言う権利なんて無いんだよ。
櫻「何故だ…何故、そこまであの男に拘る！
論文の１つもまともに書かない外科医だぞ！」
身体がカッと熱くなる。
「論文なんて興味ない！！私が目指しているのは自分の手で患者を救える外科医！
論文ばっかりの研究者じゃない！」
思わず頭に血が昇って大声を上げてしまった。
外に聞こえたかも知れない。
櫻「だが…帝華大でそれは通じんぞ。論文を書かない医者はここに必要ない！」
「別に構いません。私は帝華大の医者ではございませんので」
櫻「なに？ここへ戻ってくるんじゃないのか」
は？
いやいやいや、何言っちゃってんの。
「戻りませんよ。こんな所」
あぁ…もう、この際だから言ってしまおう。
帝華大に戻るつもりも、貴方のような医者になるつもりも無いと。
告げてしまおう。
思いっきり反抗したって今更でしょう？
「本当に尊敬している教授の元で働くことが決まりました。私は、もう二度とこの帝華大には戻りません」
真っ直ぐに。
目を逸らさずに。
逃げずに。
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霜月(プロフ) - ゆんすずさん» コメントありがとうございます！応援して頂けて非常に嬉しく思います。これからも頑張りますので、宜しくお願いします！ (2018年12月17日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんすず(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いております！！更新大変ですが頑張ってください！！応援しています！ (2018年12月15日 1時) (レス) id: 67b7d75cd8 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - snake20xjapan04さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！頑張って更新しますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白い！です。これからも楽しみにしてます。 (2018年9月26日 17時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 白兎さん» ご報告ありがとうございます。私もその作品を拝見したのですがあまりに似ていて驚きました。でも、どう対処するかまだ検討中なので…。暫くは様子を見ようかと思っております。 (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年7月13日 23時
