それで、いい ページ13
佐「とにかく、一度顔を見せには行きなさい」
「…なぜです？」
教授に顔を見せに行けと言われるとは思わなくて少し驚いた。
いつもなら行かなくて済む方法を一緒に考えてくれるのに。
海外に行ったのだって佐伯教授の提案があったからだ。
以前私はあの人の反対を押切って、征司郎と同じ市民病院に勤めていた。
でも、少ししてあの人の元に無理矢理戻されそうになった。
嫌で嫌で、どうにか逃げたくて佐伯教授に相談したら海外に留学へ行くことを勧められ、私はドイツに渡ったのだ。
上手いこと逃げてきたけど、もう限界なのかな。
折角、東城大で働けてるのに。
佐「君はまだ東城大に居たいんだろう？」
「勿論です」
佐「なら一度、行くべきだ。何を言っても君が顔を見せないとなると、あの人が強硬手段に出かねん」
強硬手段か…。
確かに無理矢理にでも私の居場所を突き止めて、自分の手元に戻そうとする可能性は大いにある。
昔も、何も言わずに市民病院に行ったがために場所を突き止められてしまった。
それからは毎週のようにあの人の手下みたいな医師たちがやって来て、私を説得してきた。
あの人が支配する病院に戻って来るようにと。
何度も、何度も。
あの頃の二の舞いにはなりたくない。
征司郎にも心配かけちゃうし。
佐「今行けば一人で心細いこともなかろう」
そっか。
あの場所には彼が…。
「………分かりました」
私は机の上にあったグラスへまた手を伸ばす。
今度は水じゃなくてビールの入った方へ。
掴んで、ぐっと煽った。
グラスに半分ほど残っていた美味しいビールを一気に飲み干す。
「あの人に、一度会ってきます」
こうなったら、会って正面から言ってやろう。
あの人に。
『あなたの元に戻ることは二度とありません』と。
教授は、大きくゆっくりと頷いた。
佐「頑張りなさい。さぁ、食事を再開しよう。海外での生活の話を聞かせてくれ」
「はいっ」
私に向けられた温かい眼差し。
あの人を親だと思ったことなど一度もない。
これから先思うこともない。
私には家族との思い出と。
それから、私のことを気にかけてくれる優しい
"親代わり"と。
態度に出ないくせに、お節介なくらい心配してくれる"幼馴染"が居るから。
それで、いい。
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霜月(プロフ) - ゆんすずさん» コメントありがとうございます！応援して頂けて非常に嬉しく思います。これからも頑張りますので、宜しくお願いします！ (2018年12月17日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんすず(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いております！！更新大変ですが頑張ってください！！応援しています！ (2018年12月15日 1時) (レス) id: 67b7d75cd8 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - snake20xjapan04さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！頑張って更新しますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白い！です。これからも楽しみにしてます。 (2018年9月26日 17時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 白兎さん» ご報告ありがとうございます。私もその作品を拝見したのですがあまりに似ていて驚きました。でも、どう対処するかまだ検討中なので…。暫くは様子を見ようかと思っております。 (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年7月13日 23時
