腕の良い医者は ページ48
世「何で知ってて止めなかったんですか!」
「人を試す為」
世「え?」
「だーかーらー。人を試す為だってば」
世「試す…?」
「そ。その為に指示した人のミスをちょーっと利用しただけ」
意味が分からないと言った顔で言葉を探している世良くん。
「そもそも今回の件は指示した人がちゃんとアレルギーのことを把握して無いのが悪い」
世「っでも、だからって、そのまま間違った投薬を見過ごすなんて!すぐに注意すればよかったじゃないですか」
「分かってないなぁ世良くんは。それじゃ意味ないんだよ」
私が注意したらそこで物事が終わってしまう。
自分の過ちをちゃんと反省するには記憶に刻み込むのが一番良いと私は思ってる。
ここでその刻み込まれた記憶に囚われて挫折するやつは、どうせこの先、誰も救えない。
「征司郎が指導医に就いたのなら、君も知っているはずだよ」
世「何をですか」
「命と向き合う事の重みとか?覚悟とか?オペのときに思い知らされたんじゃないの」
彼が息を呑む。
驚くように見開かれた目。
「その時、君の記憶に刻み込まれたこと。
その重要さをあの看護師が理解しているかどうか、私は試したかったの」
征司郎だって君を試したんじゃない?
無理に心臓の血管の縫合とかやらせたりして。
んで、失敗しちゃって。
邪魔って言われて、自分の失敗をとんでもない技術でカバーされて。
それから、自分の無力さと人を殺しかけた恐怖に悩んで苦しんで。
でも、その苦しみから逃げない事がどれ程大事で大変か知ってるんじゃない?
"人を救う人"であることが、どれ程難しい事か知ったんじゃない?
「見てないけど私には分かるよ。彼は今までそうやって何人もの研修医を試して、殺してきた」
そして、君はその試練を初めて乗り越えた研修医。
悪魔の教え子。
私はその悪魔の幼馴染。
「私も似たような事しただけ」
世「でも…そんな酷いやり方…」
震える声が耳に届いた。
あの苦しみを知っている世良くんだからこそ言えることなのだろうが。
でも、これが私のやり方。
いくら酷いと言われても、今更変えるつもりなど到底無い。
だから、人の事ですら傷つく優しい君に助言を。
「君の指導医として1つ良い事を教えてあげよう」
もう既にあの悪魔から言われてるかも知れないけど。
「腕の良い医者は何をやっても許されるの。覚えておきなさい」
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時