止めるか、止めないか ページ44
ステンレス製のトレーに乗った薬を持って歩く宮元さん。
その後ろをのんびりと歩いて追いかけていると、彼女が人を避けた先で誰かとぶつかったのが見えた。
あれは───。
宮「すみません」
木「いえ…」
木下さんだ。
今日もお仕事でいらっしゃったのかな？
彼女の視線が宮元さんの手元、トレーに入った薬へと注がれる。
そして、病室に入って行く姿を目線だけで追い掛けていた。
恐らく、トレーにペニシリンが乗っていたのに気が付いたのだろう。
木下さんなら、山本さんがペニシリンアレルギーであることを知っているはず。
以前、彼女のことを『死んで欲しいとさえ思いました』と語っていた。
その死んで欲しい程恨んでいる山本さんは今、死ぬかもしれない状況にある。
木下さんは、どうするんだろうか。
止めるのか、止めないのか。
殺すのか、生かすのか。
彼女の敵であるのか、味方であるのか。
ちょっと興味がある。
予定変更だ。
宮元さんが投薬するのを止めるのはやめよう。
それは後で、藤原師長と佐伯教授に報告を上げてから黒崎准教授とまとめて注意すればいい。
私は、病室を見つめたままでいる木下さんに駆け寄った。
「お久しぶりです、木下さん」
声を掛けると、我に返ったかのように木下さんがこちらを向いた。
私を見て表情を和らげる。
木「ご無沙汰しておりました。あの、この前は大変申し訳ございませんでした」
「気になさらないで下さい。お話は患者様から伺っておりますので」
まぁ、当の患者さんは。
「危険な状態ですけどね」
木「えっ？」
「山本さんのことですよ。見たでしょう？ペニシリンの乗ったトレー」
木下さんの目が丸く見開かれる。
木「まさか…」
「あぁ、いえ、違うんです。私ではなく担当医の黒崎先生が指示したんです」
木「止めないのですか」
「えぇ、止めませんよ。私は」
病室の方へと歩いて向かい、扉の正面、廊下の壁にもたれ掛かる。
閉じられたままの白い扉をぼんやり眺めた。
「どうしますか？」
木「……」
「これは、立派な医療過誤です。その苦しみを知っている貴女はどうしますか？」
許せない医療過誤をここで食い止めますか。
それとも、恨んでいる相手をこのまま見殺しにしますか。
貴女は、人を救える人ですか？
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
