贈り主 ページ25
世「素敵なバレッタですね。北見先生に似合いそうです」
箱の中のバレッタと私を見比べて優し気な笑みを浮かべる世良くん。
「ありがとう。でも、一体誰がこんな…」
私にバレッタを贈るなんて。
そんな人此処に居るのだろうか。
頭を捻っていると隣に居る世良くんが何かを発見したのか私に見せてくる。
世「見てください。メッセージカードが入ってます」
「ホントだ。んーと……?」
『これは餞別じゃないから』
と見慣れた字で走り書きしてある。
まだ朝早いうちなのに既に置いてあった紙袋。
中身のリボンバレッタ。
見慣れた字と『餞別』という言葉。
つまり、この贈り主は。
「アイツか…」
世「北見先生?」
首を傾げてる世良くんを置き去りにして私は箱を持ったまま贈り主が居る部屋へと向かった。
「ねぇ!」
パタパタとソファに駆け寄れば、既に起きてタブレットでカルテを見ていた征司郎がうざったそうにこっちを見る。
渡「なに」
「征司郎でしょ。これ私のデスクに置いたの」
差し出した箱に入っているバレッタを見て「あぁ…」と呟いてそれを私の手から取り上げると、ソファの空いたスペースをぽんぽんと叩いた。
座れということか。
無言のまま座ると、逆に征司郎は立ち上がってソファの背凭れを挟んで私の後ろに立った。
渡「着けてやるから大人しくしてろ」
振り向こうとした私の頭を抑えて前を向かせる。
「何で急に新しいの買ってくれたの?」
もう、この際ブランドがどうとかはいいから理由が知りたい。
渡「あ?だってこれ、もう5年近く前にやったやつだろ。そろそろ新しいのにしろよ」
「そうだけど…まだ使えるのに」
着けていたバレッタが外されて、新しい方を着けられた感覚がする。
パチンと金具が留まった音が小さくした。
突然、後ろから征司郎の腕が伸びてきてそのまま抱き締められる。
所謂バックハグと言うやつだ。
渡「いいんだよ。虫よけの意味もあるからな」
「虫よけ?どういうこと?」
渡「そのまんまの意味」
耳元で楽しそうに囁かれた。
悪魔は相も変わらず楽しそう。
私は"虫よけ"の意味が分からず、疑問に思って首を傾げるだけだったけれど。
そして後程、虫よけの意味を尋ねた権の字に苦笑されながら「その"虫よけ"って言うのは、男除けって意味だな」と言われ、私が顔を真っ赤にすることになるとは、この時の私が知る由もない。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時