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理由は ページ22

テーブルの上にあるスマホは応答を待って鳴り続ける。
征司郎は怠そうに電話に出た。




渡「なに、もう着いたの。じゃあカフェで待ってろ。すぐ行く」




それだけ伝えて直ぐに電話を切る。

征司郎に電話を掛けてくるなんて珍しい相手もいたものだ。
しかもこの後、会うみたい。




渡「呼ばれた」


 「うん。行っておいで」




征司郎は再度ぎゅっと私を抱き締めてから、腕を解いて身体を起こす。

漸く開放された私も立ち上がって、ハンガーに掛けてあった白衣を手渡した。




渡「じゃあ、ちょっと行ってくる」


 「行ってらっしゃい」




仮眠室から出ていく征司郎の姿を見送ってから、私はデスクには戻らずソファに座った。

後方でゴソゴソと音がして隣に誰かが座る。
そして、こてん、と私の肩に頭を預けてきた。




 「猫ちゃん、おはよう」


猫「おはよう。渡海先生出てった?」


 「うん。誰かに会いに行ったみたい」


猫「そう」




自分から聞いておいて興味なさ気な様子。
征司郎が誰に会いに行ったか検討が付いているのかもしれない。




猫「安心しなよ。恋人とかじゃないから」


 「え?」


猫「顔に相手が気になるって書いてある」




見透かされてしまった。

流石猫ちゃんだ。相手のことよく見てる。
いや…この場合私が分かり易いだけかな?




猫「そのうち紹介してくれるよ。それよりさ、渡海先生随分と疲れてるね」




話題を逸らされてしまった。

どうやら相手が誰なのか知っていても、猫ちゃんから私に言うつもりは無いらしい。
仕方ない。後で征司郎から聞こう。

いや、そんな事より。
猫ちゃんが後半に言ったことの方が気にすべきことだろう。




 「征司郎が疲れてる?どうして?」


猫「だって、Aにベッタリよ」


 「いや…確かにそうだけど…」




一体それと征司郎が疲れているのと何が関係しているのか。
そもそも何にそんなに疲れているのか。





猫「Aは知らないだろうけどさ。渡海先生、オペが続いて疲れが溜まるといつもAに電話しようとする」




それは驚きだ。知らなかった。

確かに海外にいた頃、珍しく向こうから電話が掛かってくることはあったけれど…気まぐれだと思ってた。




猫「それが、本人が目の前にいるから電話じゃなくて行動に表れてるんだと思う」


 「なるほどね…」




疲れによる"甘えたがり"と来たか。
これはまた、随分と可愛げのある面倒な幼馴染を持ったものだ。

甘やかし→←二時間後



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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時

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