二人の看護師 ページ32
木下さんが飛び出して行ってしまったことで呆気に取られている世良くん達。
そんな中、山本さんは動揺した様に目を泳がせている。
「昔、木下さんと何かあったのですか？」
静かで狭い病室の中。
私の声だけが響く。
姿を見ただけで飛び出していくなんてよっぽどの事があったんだろう。
このまま見なかったフリも出来なくは無いが、それでは良くないような気がした。
山本さんは暫く心を落ち着けるように深呼吸をして。
それからゆっくりと口を開いた。
山「彼女とは…以前、同じ職場で働いていたんです」
数年前まで木下さんは看護師として山本さんの下で働いていたそうで。
山本さんが主任で、木下さんとオペ看としてとある手術に入った時。
執刀医が医療過誤を犯して患者はそのまま死亡。
執刀医は上に自分ではなく木下さんのミスであると報告。
証言を求められた山本さんは、病院側に迫られ、真実を語って自分が消されることを恐れた。
そして、『木下さんがミスをしました』と嘘の証言をしたらしく。
その事によって木下さんは、病院を追い出される形で看護師を辞めたそうだ。
つまりは、医療過誤。
世「そんなことが…」
呆然と立ち尽くす面々。
まだ研修医の世良くんにとっては初めて聞く話だろうし、受け入れ難いだろう。
でも、これはきっと事実だし、こういったことはあるものだ。
山「人の敵は…人なんです」
俯いた視線を窓へ移して、何処か遠くを見つめる眼差しは不安げに揺れている。
山「すみません、こんな話しちゃって」
「いえ。こちらこそ、立ち入ったことを伺ってしまいました。申し訳ございません」
何かあるとは思ったが、まさかの医療過誤の話が飛び出してくるとは思わなかった。
ツキンと心臓の辺りが痛くなる。
思い出しかけたとある光景を、頭を軽く降って追い出した。
山「治験については、前向きに検討致しますので…。担当は他の方にお願いできないでしょうか」
「勿論、大丈夫です。その旨、木下さんにお伝えしておきます」
木下さんとしても、恐らくトラウマの様なものであろう山本さんの担当は辛いだろう。
早急に変えてもらえるようお願いをしなくては。
今から追いかけたら間に合うだろうか。
まだ、院内に居るだろうか。
「それでは…私は、これにて失礼致します。今日はゆっくりと休んでください」
後のことを世良くんと美和ちゃんに任せて、私は権の字を連れて病室の外に出た。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
