僕らの世界4 (ページ8)

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ブラコン？ページ8

最近、隼の様子がおかしい。

具体的にどのへんがって言うと、前は俺ー東海林翔ーにベタベタくっついてきたけど、ここ数日はやたら距離を取りたがる。最近暖かくなってきたからか、もしくは兄離れか。くっついてきていた頃は正直うっとうしいと思うこともあったけど、それがなくなるとちょっと寂しいような気もする。

それから、「兄ちゃん」って呼ばなくなった。前から人前では「兄貴」と呼んでいたけど、最近は家でも「兄貴」って呼んでる。

あんなに可愛かったのになぁ…とか思うけど、今本人の前で言ったら高確率で手痛いしっぺ返しを食らうだろう。それも、小学3年生がやるようなレベルのいたずら。例えば膝カックンとか、外にいる時だったら服にくっつく雑草を大量に投げてきたりとか。

「兄貴、ヒーターつけていい？」
俺の部屋で漫画を読んでいた隼が、漫画から顔を上げて訊いてきた。
「やだよ、暑いし」
「そこを何とか」
「厚着したら？」
「やだ」
ちょっと拗ねてる。俺、何かしたかな？と自問自答してみるけど、特に思い当たることはない。
「何で？」
「…何となく」
微妙な沈黙。隼は、ベッドのある方へモゾモゾと移動する。
「…今日は、くっついてこないの？」
そう訊いてみると、
「んー」
と、どっちつかずな返答。
「兄ちゃん離れ？」
「かもね」
「何だよ、かもねって」
「俺、もうすぐ3年生だから」
隼は、布団から顔だけ出して言った。その答えには、どう返事をしていいのかよく分からなかった。隼とこんな会話をしたことがなかったから。
「そっか、俺の知らないうちに大きくなった？」
「んー」
「お兄ちゃんになったな」
「俺のこといくつだと思ってんの」
隼は寝返りを打って俺に背を向けた。

「…でも、」

「兄ちゃんがそんなに言うんだったら、くっついてもいいかな」

背を向けたままそう言って、またこっちを向いた。素直じゃないけど、確かにいいって言った。
「本当？」
「いいよ、別に」
「じゃ、遠慮なく」
くっつこうとしたら、首に手を当てられた。
「冷たっ」
「隙あり」
ニッといたずらっぽく笑う隼。俺も、このやろ、と言って脇腹をくすぐってやった。じたばた暴れる隼は、いつまでも5歳児のままみたいだ。
「可愛い」
と、つい心の声が漏れると、
「兄ちゃんは俺の彼氏ですか」
とツッコまれた。もしかしたら、隼は一生兄離れできないのかもしれない。そして、俺も一生弟離れできないのかもしれない。
ずっと暴れていたら、下の階にいた親に「高校生と中学生になってまで…」と呆れられた。