僕らの世界4 (ページ46)

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近況報告ページ46

『もしもし海斗？どうしたの？』
電話から聞こえる凉馬の声に、俺ー進藤海斗ーは泣きそうになった。
自分から電話をかけておいて、「特に話はないんだけどさ」なんて言いたくなる。
「うん…凉馬どうしてるかなって思って」
『珍しいね、僕は元気だよ』
「そうか…」
次の言葉が出てこない。凉馬と話したいことは、こんなんじゃないだろう、と自分に言ってみるけど、せき止められたようにどこかで詰まっている。
『僕もちょうど、電話しようと思ってたんだよね。生徒会のこれからの方針が決まったから、報告したくて』
「ああ、決まったんだ」
『まず、会議とかする活動の拠点を青葉の家に移す』
「え、真帆の家？」
『駅からも海斗んちからも近いからね。学校と違って堂々と電話できるから、電話で参加もできるし。あとは、ファミレスよりスパイされる可能性が低い』
「俺は、真帆の家に行ってもいいし、電話で参加してもいい、みたいな？」
『そうそう。日時はメールで伝えるから、その時の気分で』
「了解した」
ここまで俺のために気を遣われると申し訳ないような気もするが、こういう時は頷いておいた方がいいんだろう。
『ところで海斗、最近何かあった？』
突然の転換に、「えーっと」という歯切れの悪い言葉を連呼してしまった。
「半分、夜型から脱出した。昼の12時から夜の4時とか、日中もちょっと起きられるようにはなってきた」
『本当？よかったな。起きてる間は何してるの？』
「まあ、勉強とか。自分で不登校になってもちゃんと勉強するって言ったから、勉強は毎日してる。あとは、夜にジョギングかな。真帆のいとこで、渚学園高等部生徒会の人と一緒に走ってる」
『普通に健康的な生活じゃん』
凉馬は一息ついて言った。
『…安心した。海斗がちゃんと人間生活してて』
「いやいや、さすがに俺も人間だから。てか、凉馬は田舎のお母ちゃんですか」
俺がツッコむと、凉馬は笑いながら言った。
『それだけ元気なら大丈夫だな』
「おう」
凉馬の声は、何となく元気がつく。どんな栄養のある食べ物でも、どんな質のいい睡眠でも手に入らないような何かがある。
「ありがとう、凉馬」
『え？…うん、それじゃ、また何かあったら電話して』
「分かった。じゃあな」
窓の外から見える空には、もう月があった。俺は急いでジョギングの準備をして、家を飛び出した。