僕らの世界4 (ページ41)

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落第生伝説ページ41

「こんばんは」
「おう」
俺ー進藤海斗ーは、先輩に挨拶をすると、早速話を切り出した。
「昨日の話の続き、聞かせてください」
徐々に加速して、待ち合わせ場所である駅が遠のいていく。
「ああ、そうだな。中等部の時、外部進学しようと思い立ったんだ。その頃は陸上部入ってなかったから、高校ではちゃんとやろうと思って、どうせなら強豪校にってことで中原高校に行こうと思った」
中原高校は、俺も知っている。かつての陸上部の先輩たちも、口を揃えて「強い」と言っていた。それに、このへんでは5本の指に入るくらい頭もいい。天から3物も4物も貰った人が行くような所、という認識がある。
「あと、その時生徒会で一緒だった高山って奴が行きたいって言ったのもあるな。高山は元祖流浪人で、色んな部活で活躍してたから、まさに引く手あまた。今考えてみれば、そんな奴と一緒に行こうとしてた俺って結構バカだよな」
先輩は、ケラケラと笑った。つられて俺も笑いそうになるけど、失礼かなと思って笑いを押し込むと、先輩は
「俺、そこまで上下関係とか気にしないから、笑いたいなら笑えばいいよ。せめて俺の前だけでも素直でいてほしいし」
と、極上の優しさで返してくれた。
「それで、神河菜々って分かる？副会長で、咲ちゃんの姉貴」
「はい」
すぐにメガネをかけてキリッとした知的な顔が思い浮かんだ。
「それで、神河のことが前から好きでさ、別の学校行く前に告白したんだよな。いちおうOKもらって今も付き合ってるんだけど、別の学校行くっていう心配は全くいらなかったな。この通り、今も渚学園の生徒だしね」
先輩は、ポケットから学生証を取り出した。そんな所に入れてていいのかな…
「で、進路相談で外部進学するって言ったら、内部進学切るって言われた。それでもいいって言って受験したんだけど、見事に落ちました、行く高校ありません、どうしよう、と」
一気に説明が雑になった。
「思い切って学校に相談したら、生徒会での活躍があってギリ救済してもらった。本当に命拾いしたよ」
「そんなことがあったんですね」
「そう。でも救済してもらった代償として、今も『落第生』とか『出戻り』とか散々いじられるはめになったけど」
「あーあ…でもよかったですね」
俺は、言った後で言葉が矛盾していることに気付いた。
先輩は、フッと笑ってから言った。
「そうかもな。ある意味自慢話だし、俺だけの話って感じで嫌いじゃないよ」

俺だけの話って感じで嫌いじゃない。

この言葉がやけに刺さって、いいなと思った。
「落第生伝説ですね」
俺は、今日イチ素直に笑った。