僕らの世界4 (ページ36)

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小石ページ36

「それじゃ、協力しよう」

愛と平和の落第生は、手をパンと一発叩いて提言した。
俺ー市原純ーは、またやられた、と思った。
こういう場をまとめるのは、会長である俺よりもキョーちゃんの方が向いているんだ。通算38回目の「やられた」。俺は話し合いに向いていないと、つくづく感じる。

「協力、ですか？」

俺が密かに「ドン」と呼んで警戒していた伊達が反応する。
伊達は、ここぞという時に実力を発揮するようなタイプだ。日頃の行いがいいからか、運で言えば現生徒会の中で飛び抜けていい。厄介になりそうな奴だとちょっと思う。

「そうそう、俺たちの目的は校則の自由化で、そっちは文化部の地位向上と部室を守ること、だよな？」
「はい」
「加えて、共通の目的として、流浪人会を正式に部活として認めてもらうこと、というのがある」
「はい」
「だから、協力しよう。協力して校則の自由化を進めれば、文化部のことも流浪人会のことも解決すると思う」
「なるほど…」

中等部の面々は、両校の会長の方へ目を向けた。
2人は互いに目を合わせ、小さく頷き合う。結論がまとまったらしい。

俺は、この2人に心底感心した。言葉を交わすことなく意思疎通ができている。しかし俺はそれができない。何をやっても人の意思を汲み取ることができない。東海林会長も青葉従姉妹も、俺よりよっぽど優秀じゃないか。

「分かりました、協力しましょう」
「お、本当？ありがとな。ということで、これからよろしく」
「はい、こちらこそ」
東海林会長とキョーちゃんは、握手をした。途中から手の握り潰し合いになってたけど。

俺がただ座っているうちに、どんどん話が進む。いつもそうだ。俺が静観していると、みんな先へ行ってしまって、俺は最後に1回頷くだけだ。偉そうに座ることと、人の意見に附和雷同することくらいしか仕事はない。今までの生徒会の功績は、殆どキョーちゃんか菜々によるものだ。俺は、会長としての才能はない。目の前の激流に身を任せていただけだった。

小石のような俺は、全員の顔を見回してから、1度首を縦に振った。